元祖・天才棋士が、中学生の天才棋士のまだ見ぬ一手に心を躍らせている。将棋界の第一人者・羽生善治二冠(46)がAbemaTVのインタビューに答え、史上最多の29連勝を達成し、その後も高い勝率を維持している中学生棋士・藤井聡太四段について「ギリギリのところでどういう手を指すのか、人をあっと驚かせるような一手を見せてくれるんじゃないかっていう期待もある」と語った。非公式戦ながら藤井四段と2度対戦経験がある羽生二冠は、中学生棋士の秘めた力が発揮されることを今か今かと待ち望んでいる。
同じく中学生棋士としてデビューし、30年以上経過してなおトップ集団で走り続ける羽生二冠にとって、藤井四段は実に刺激的だ。今春に放送された「炎の七番勝負」で、デビュー間もない藤井四段の攻撃的な指し手の前に敗戦。非公式戦ながら、スポーツ紙では1面を飾るところも出るほどの大ニュースとなった。「非常に攻め将棋でもありますし、指したところで明らかにミスっていうようなのはなかったのでそういう意味では非常に全体的なバランスのいい棋風とも思いました」と対局を振り返った。その後、非公式戦で再戦し、その時は羽生二冠が勝利。新旧の天才対決は、今のところ五分の星だ。
公式戦でも次々に若手棋士の挑戦を受け続ける羽生二冠だが、藤井四段について楽しみにしている点は、棋士の感覚が最大限に研ぎ澄まされる、大接戦で見せる渾身の一手だ。「(藤井四段の)今までの公式戦の対局の中で、ものすごく大接戦というか大熱戦になった将棋って本当に少ないんですね。もしかすると、藤井さんが持っているこう、魅力的な部分は、そういう場面でどういう手を指すかっていうことかもしれないんです」と目を輝かせた。将棋ソフトにより将棋の研究が加速度的に進む中、若手棋士の指し手が似る傾向にあると指摘する棋士もいる。羽生二冠が見たいのは、研究の上に藤井四段の感性が上乗せされた、誰にも指せない一手だ。
取材スタッフから、藤井四段との次回対局したらと聞かれると「もちろん負けるよりは勝つ方がいいには決まっていますが、でも自然体で臨もうかな、とは思います」と、穏やかに答えた。将棋に勝敗以上のものも求める羽生二冠。敵として倒すより、15歳の若者が今度はどんなものを見せてくれるのか。まだ見ぬ一手が待ち遠しい様子だった。
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