将棋界において20代棋士の出世レースが激化している。2017年度は菅井竜也王位(25)、中村太地王座(29)が相次いで羽生善治棋聖(47)からタイトルを奪取。これで8大タイトルのうち新たに追加された叡王を除く7つのタイトル保持者は20代3人、30代1人(渡辺竜王が二冠)、40代2人と、世代による勢力図が大きく変わった。また挑戦者にも斎藤慎太郎七段(24)、千田翔太六段(23)らが登場している。このタイトル争いに加わろうとしているのが、近藤誠也五段(21)ら20代前半の若手棋士たちだ。
デビューから5年、10年と経験を積んでから上を目指しているのでは、今の世代交代の流れについていけない。そんな状況がやって来ている。いわゆる「羽生世代」を中心とした現在40代の棋士たちは、今から20年ほど前までに当時トップに君臨していた棋士たちを次々と撃破。最年少タイトル記録を持つ屋敷九段、四段時にタイトルを取った郷田九段ら、デビュー間もないころからトーナメントを勝ち抜き、番勝負まで駆け上がった。中学生棋士・藤井聡太四段のように、若き天才がいつまた出てくるかもわからない状況の中で、一歩でも二歩でも先に出なければ、取り残されるシビアな世界だ。
通算勝率でトップクラスの近藤五段にとっても、タイトルは真っ先に目指すものの1つだ。「順位戦のC級1組から昇級するのももちろんですが、将来はタイトルを取れる棋士になりたいと思っています。5年以内には頑張って取りたいですね」と、目標までの目処はつけてある。多数の棋士がひしめくC級2組で“一期抜け”を果たした近藤五段だからこそ、5年以内の戴冠も十分現実味がある。
20代半ばから後半に、知識と経験が高いレベルで融合し始めるのが、プロ棋士の世界。今、先輩棋士たちの壁にぶつかっている20代前半の棋士たちが、1つまた1つと壁を破る瞬間が徐々に近づいている。
◆近藤誠也(こんどう・せいや)五段 1996年7月25日、千葉県八千代市出身。所司和晴七段門下。棋士番号は303。2007年9月に奨励会入り。2015年10月1日に四段昇格を果たしプロ入り。実質的なデビュー年となった2016年度に、公式戦で羽生善治棋聖に勝利する快挙。AbemaTV「魂の七番勝負」第7局(11月11日放送)で木村一基九段と対戦する。
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