「議論もしないで、『アメリカの核の傘があるから大丈夫だよね』『ミサイル防衛があるから大丈夫だよね』で、本当に日本の独立と平和っていうのは達成されるんだろうか。きちんと議論もしないで北朝鮮の脅威ばかり言い募ってもどうにもならんのではないか」「本当にいよいよ有事になって、とんでもない判断をするより、今きちんと議論することが、日本国のためだ」。
核兵器を「持たず・作らず・持ち込ませず」という"非核三原則"は、今から半世紀前の1967年に佐藤栄作総理が表明したもので、国会でも決議され"国是"とされてきた。この功績を評価された佐藤総理は、後にノーベル平和賞を受賞している。しかし、北朝鮮の脅威が増す中「持たず・作らず・持ち込ませず」に加えて「議論せず」の"非核四原則"でいいのだろうかと問題提起するのが、元防衛大臣の石破茂衆議院議員だ。
河野外務大臣は「現時点で拡大抑止を含む米国の抑止力は極めて有効に働いている。政府は非核三原則の見直しをこれまでしたことはない。これからも見直しの議論をする予定はない」と述べた。また、小野寺防衛大臣も「非核三原則について政府としては、現在も従前と同じ考え方だと思う」と述べている。
非核三原則について、核弾頭を積んだ戦略ミサイル潜水艦の横須賀や佐世保基地への寄港を例に挙げ、「持ち込ませず」について議論すべきだと主張する石破氏。18日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』でも、「作らない・持たないというのは、やはり我が国として譲れないところだと思っている。しかし、北朝鮮がハワイ・グアムにも届く核ミサイルを持つようになった今、本当に米国の核の傘は今まで通り有効かと検証することが政府の国民に対する義務ではないか」と指摘した。
「昭和39年(1964年)10月16日、東京オリンピックの真っ最中に、呼ばれなかった中国が初めて核実験をやった。池田勇人さんがオリンピック終了と同時に辞任、次の佐藤総理は米国に行ってジョンソン大統領に『日本も核を持つぞ』と言った。そこで『いや、ちょっと待て。日本は核兵器なんか持つんじゃない』ということになって非核三原則ができ、拡大抑止=核の傘が確立された。それが歴史的経緯であって、北朝鮮という何をやるかわからない、中国とわけが違う国家が核兵器を持っている時に、本当に米国は守ってくれるのだろうか。フランスのド・ゴールの有名な言葉に『同盟国は共に戦うことがあっても、運命は共にしない』というものがある。フランスはアメリカが反対しても核を持った。イギリスはアメリカの潜水艦と核の技術をそのまま導入した。そして、今のドイツ、ベルギー、スペイン、イタリアがとっている政策がニュークリア・シェアリングだ。日本がそのどれも採らないとするならば、核の傘の実効性の検証をすべきだ。それをやらなければ拡大抑止の信頼性が揺らぐ」。
石破氏が検討すべきだと主張しているのが、この「ニュークリア(核)・シェアリング」という考え方だ。核兵器を持たない国が米国と条約を結び、有事の際、その核を使って反撃できるというもので、条約を結んだ国は核の"保有権"ではなく"使用権"を持つことになる。すでにNATO(北大西洋条約機構)加盟国の一部がこの仕組を取り入れている。
「核兵器不拡散(NPT)条約というものがあるので、核シェアリングでは核を保有するのではなく使用するとしている。あまり今の時代流行るものでもないが、戦闘爆撃機という、いわゆる地上攻撃機に積むという形になっている。やはり核というものについて何らかの権限を持ち、米国との間にいつどのように使うか協議を進めるべきだ。これは欧州諸国では当たり前のことだ。このような協議は事務レベルでも政治レベルでも常にやっている。日本もそういう協議をちゃんとやっているということを国民に対してメッセージとして発する義務がある。それと同時に、国民が軍事を知らないというのはどんなに恐ろしいことか。太平洋戦争でもそうだった。『米国は恐るるに足らず、最初に真珠湾を叩けば厭戦気分が盛り上がっていい条件で講和に持ち込めるぞ』と。全然そんなことはなかったではないか。米国の力も自国の実力も知らないままにどんどんと突き進んであんなことになった」。
石破氏は、日本の現状を危惧しつつも、諸外国ではもっと議論が進んでいると話し、「ドイツやイタリア、あるいは敗戦国ではないベルギーやスペインも徹底的に議論をしている。それだけ国の独立や国民の生命、統治機構などついて、政治が国民に対して語っている。日本国民は語れば答えてくれると私は思っている。別に核を持って世界中を相手に戦争を仕掛けたり、あるいは核兵器を先制的に使ったりということではない。日本が平和であり続けるためにと政治が語れば、わかってくださる方が多いと思う」と期待感も滲ませる。
「政治が本気になって国民に語っているのだろうか。今回の総選挙でも憲法の議論を本気で語った人はどれくらいいたか。語らないで国民がどうやってわかるのか。自由民主党は本当に日本国の独立と平和、国民の生命・財産を守る義務を負っている。だとしたら、本当に真剣に語るべき。その努力もしないで『どうせ分からないから』というのは、私はあまり好きじゃない」と警鐘を鳴らした。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)