他党の議員を「犯罪者」呼ばわりし、批判を浴びている日本維新の会の足立康史衆議院議員。「国会の暴言王」「維新のトランプ」などの異名をとる足立氏の暴言は今に始まったことではない。
京都大学大学院、米コロンビア大学大学院修了後、通産省に入省し、大臣官房参事官、JETRO、日本貿易振興機構のベルギー駐在員などを経て退官。2012年の衆院選で初当選し、現在3期目の足立議員。『国会議員三ツ星データブック』によれば、今年の衆議院の質問時間ランキングで堂々の第1位に輝いている。先月には著書『永田町アホばか列伝『懲罰代議士』が実名でブッタ斬る!』を上梓した。
昨年4月の衆院総務委員会では、民進党の安保法への対応について「アホじゃないかと思いますね。アホが駄目なら嘘つき」「日本の国会の恥。嘘つき、アホ、バカ。もうどうしようもない政党」と過激な言葉遣いを連発。民進党は翌日、懲罰動議を提出した。さらに、その2週間後には民進党の熊本地震の対応について「アホだと思う。頭が悪い」「ふざけるなよ、お前らホンマに」などと再び暴言を炸裂させ、去年1年間4回の懲罰動議を受けた。
そして今月15日、加計学園問題を審議する衆議院文部科学委員会で、自民党の石破茂元幹事長、立憲民主党の福山哲郎幹事長、希望の党の玉木雄一郎代表が獣医師会から献金を受け取っていると指摘、「犯罪者たちがまわりを取り囲んで非難しているというのが今の国会」と非難。希望の党の今井雅人国対委員長代理は抗議しつつも「懲罰については悩んでいる。懲罰なしでは足立の術中にはまる」と述べ、維新と政治理念が近い自民とともに、今後の連携を意識してか動議は出さずに和解。一方、立憲民主党の山内康一国対委員長代理は「犯罪者呼ばわりをするということはやはり度を越している」として動議を提出した。
当の足立議員は17日、3党の議員らを前に「文科委員会での表現について、本当に申し訳なかった。あの表現については深く反省をし、撤回をし、謝罪を申し上げる」と述べた。しかし「野党の皆様が斡旋利得にかかる様々な疑惑があることは、私はそうだと思っているので、疑惑については撤回しないし、これからも言っていきたい」と追及の構えも見せた。
25日放送のAbemaTV『みのもんたのよるバズ!』に生出演した足立議員は、番組冒頭「ABC(アホ、ボケ、カス)足立と呼ぶ人もいるが、ひっくり返してAKBと呼ばれることもあります」と自己紹介。同席した民進党の小西博之参議院議員に「スベってます」と突っ込まれると、「スベってるのはコニタンだからね。亡命したんじゃなかったの?帰ってきたの?」と反撃。
問題の"犯罪者"発言について足立議員は「5回言ったうち3回は"犯罪者の疑い"と表現していたが、2回は"疑い"という部分が飛んでしまった。3党に謝罪したのは"疑い"が抜けていたことについて。彼らには疑惑があると今でも思っていて、それは撤回していない」「野党は"足立が謝らないと審議に応じない"と日程闘争に入ってくる」と説明。「獣医師会から献金をもらって役所に圧力をかけたり、業界のために国会質問したりすると収賄罪になる可能性がある。過去には同じようなケースで逮捕されている事例もある。そんな疑いのある人が李下に冠を正した安倍総理をなじっているという滑稽な国会の姿を皆にわかってほしいと思った。」と主張した。
元東京地検特捜部の若狭勝氏は、資金提供と質疑依頼を受け了承すれば『受託収賄罪』が成立するが、「純粋な政治献金だ」と弁明された場合、立証は難しいと話す。小西議員も「私も政治資金パーティーをやっているし、足立氏もやっているではないか。収賄罪はお金をもらった行為と質問が結びつかないといけない。『疑い』というレベルなら、足立氏に立証責任があるのではないか」と指摘した。
これに対し足立氏は「野党だってもりかけ問題について安倍総理に対して同じことをやっている。勝手に疑って、立証責任を安倍総理に転嫁している。だから私は『あなたたちだってそうでしょ』と言いたかった」と反論、「確かに皆、政治資金をもらっている。でも、こういう疑いをかけられるから私たち維新の会は企業団体献金をもらっていない。皆、同じ穴のムジナだから守り合っている」と語気を強めた。
小西氏が「偉そうに言っているが、維新の会も企業団体献金を受けている。議論をすり替えてるだけ。立証できないのに特定の議員を批判することは許されない。一般社会なら名誉毀損だ。野党にもかかわらず(安倍政権がおかしいと)言わないんだったら自民党に行ったらいい。炎上商法を繰り返しているだけだ」と厳しく批判すると、「僕は与党にも是々非々、野党にも是々非々。虚心坦懐に、ニュートラルに見ると与党は9くらいが是、1くらいが非だからだ。たとえば小泉進次郎さんのことはずっと攻撃している」と反論した。
コラムニストの吉木誉絵氏は「足立議員を擁護するつもりはないが、安倍総理を追及している野党が日本獣医師会から献金を受けているということは、立場が違うだけで同じようなことをやっているとみられてしまうと指摘したのではないか。例えば玉木議員が日本獣医師会から献金を受けたのは2012年だが、集会で"おかしな方向にいったら僕が食い止めますから"という趣旨のことを言ってしまっている」とコメント。
元朝日新聞社編集委員でジャーナリストの山田厚史氏に「"反省します"と言っていたし、片山虎之助さんに注意されたのに、それを受け入れていないではないか」との指摘を受けると、足立議員は改めて「"疑い"と言ったつもりが断定していたことについて怒られたので"ゴメン"と言った。私も普通、根拠が無ければ言わない。だけど今の国会を見てると、根拠がないのにそういうことを言っている人がいっぱい座っている。安倍総理にも疑いレベルでレッテルを貼っている」と、改めて"犯罪者の疑い"の主張そのものは正当だと訴えた。
本会議で懲罰動議が審議されたのは平成に入ってから5例しかなく、2000年には保守党(当時)の松浪健四郎議員が壇上からコップの水を撒いたことによる懲罰動議が可決され、25日間の登院停止処分を受けた。憲政史上空前の懲罰動議5回という新記録を更新したことになる足立氏だが、未だ処分に至ったことはない。
小西議員は「政党の責任でもある。もう足立さんに国会質問をさせません、とやればいい。日本維新の会は"身を切る改革"と言っているのに、"足立切り"をしていない。まずはしっかりけじめをつけることを公党としてすべきだ。及び腰なのは、審議になると壇上で弁明ができるので、そこで国会の品位が汚されるのを心配しているからだ」と指摘すると、足立議員は「暴行しても動議が出ない場合もある。懲罰動議はかつての民主党や民進党が政局で使われているからだ。本当にまずければ委員会が設置される」とした。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)