将棋の女流棋士にとって、着物は対局番組やイベントなど晴れ舞台で着る機会がとても多いものだ。将棋と同じく、日本で長く愛され育った伝統文化でもある着物は、単に女流棋士を艶やかに見せるだけでなく、その棋士の性格や棋風などを色や柄で伝えてもいる。AbemaTV「花の三番勝負 白黒はっきりつけましょう」の第1局に登場する香川愛生女流三段は、着物での対局について「本当に心が満たされる」と、秘めた思いを語った。
将棋界では、ゲームをはじめ様々な業界でも活躍することが知られる香川女流三段だが、「将棋と着物」という日本の伝統が詰まった組み合わせには、言葉では表しづらいほどの充足感があるという。「将棋も着物も、日本の伝統文化。着物は歴史的な価値も高い。最も格式のある、それでいて美しいもので対局ができるというのは、本当に心が満たされる感じがしますし、気も引き締まりますね」と、凛とした表情で答えた。「ふさわしい対局がしたいという気持ちが、ますます強くなりますから」。棋譜は棋士、着物は職人による作品。“本物”の着物に身を包むからこそ、それに負けない棋譜を作ろうと、心にも普段と違うものが宿る。
呉服店とも付き合いが長くなると、着物を通しての“会話”が生まれる。今回の対局では、創業1853年の老舗・白瀧呉服店から衣装提供された。「私が白瀧さんとお会いしてから、もう8、9年になりますかね。中学生のころからお世話になっています。今回はかわいらしいオレンジで、花柄の振袖を選んでいただきました。なんとなく落ち着いた雰囲気も出してもらったのがうれしいですね」と、はにかんだ。今から4年前、20歳のころは赤やピンクといった、かわいらしさを強く出したコーディネートが多かったという。年齢を重ね、より女性らしさが増したところに、提案された落ち着きもある女性らしい着物。「見た目だけでなく、個性というか人となりに合わせて選んでいただいているので、素直にうれしいです」と感謝した。直接会話を交わさずとも、成長した姿へのメッセージを、着物のコーディネートで伝えられているわけだ。
華やかな着物姿の女流棋士が真剣な表情で対局する様子は、晴れやかながら気持ちを新たにする、新春の雰囲気に実にしっくりくる。日本人の心に染み渡るのも「将棋と着物」、日本の伝統文化の融合ゆえだ。
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