屈強な力士が集う中で、全く恐れず土俵を楽しむ若者がいる。23歳の新鋭、阿炎(あび=錣山)だ。新入幕となった初場所で10勝5敗の成績で敢闘賞を受賞。場所前から記者たちに「三勝を取る」と宣言し、見事に獲得した有言実行の力士として知られることとなった。前頭七枚目まで番付が上がったが「対戦したことがない人がいっぱいいるんですが、あわよくば11番、12番勝って、運がよければ三賞を」と、プラス思考には一切ブレがない。3月11日からは始まる大阪場所の直前に、みなぎる自信の理由を聞いた。
新入幕だった初場所の番付発表で、いきなり2ケタ勝利を宣言し周囲を驚かせた。「あれは自分を高めるというか、気持ちを持ち上げるために言いました。ちゃんと持ち上げられましたね」と振り返った。言葉にすることで自分を鼓舞する。高めるだけでなく「しゃべることがリラックス」にもなっている。返答に困りそうな質問に対しても「負けようと思って土俵に立っているやつはいませんから。なんなら初日は(場所を)全勝するつもりでいますよ」と、トークでもひたすら前へ前へと進んでいく。
幕内上位との対戦が増える大阪場所でも、対戦への期待があふれている。「緊張もするんですが、それすら楽しんでいます。強い人の中にまぎれられて、楽しいしか出てこないですね。自信というか、同じ幕内ですから勝てないことはないんです」と、もはや後ろを向いたことがないといわんばかりの徹底したプラス思考だ。
初場所では、目の前でまぶしい瞬間を体験した。十四日目、栃ノ心が平幕優勝を決めた瞬間、控えにいた。「館内がワーっとなったのを見たんです。いつか(あの歓声を)浴びたいと思いましたね」と、幕内最高優勝の興奮をちょっとだけ“味見”した。大歓声に近づくために、初場所では1つ獲得した三賞を、大阪場所では総取りするほどの意気込みで臨む。「また大きいこと言っちゃいましたね。やっちまったー(笑)」。阿炎が大きなことを言えば言うほど、周囲の期待は比例して大きくなる。
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