大関高安や三役経験豊富な玉鷲ら、幕内の実力者たちが一堂に会した二所一門の連合稽古で親方衆や関係者の目を一際、引いたのは入幕2場所目の竜電だった。高安に左四つに組み止められかけたが、これを振りほどいて食い下がる形で寄り切るなどして大関に連勝。高安のほうはすでにかなりの番数をこなし、ややスタミナ切れ状態だったとは言え、本人にとっては大きな収穫になったはず。幕内屈指の圧力の強さを誇る元大関琴奨菊や玉鷲に対しても、相手の当たりに下がることなく攻め返して寄り切るなど、見せ場を十分に作った。

 「少しずつ稽古場でも買われるようになって、ちょっとは認めてくれたのかな」と番付上位の力士から稽古相手に指名されるのがうれしいと言わんばかりの言葉が、いかにも稽古でのし上がってきた竜電らしい。

 早くから若手ホープとして注目を浴び、21歳で関取の座を射止めたが右股関節を骨折。その後も同箇所の骨折を繰り返し、序ノ口まで番付を落としながら4年ぶりに十両に返り咲くと順調に番付を上げていき、先場所で新入幕を果たした。幕内デビュー場所でいきなり10勝をマークして敢闘賞を受賞した活躍は、まだ記憶に新しい。

 現在、5場所連続で勝ち越し中。地力は着実にアップしており、今場所は番付を6枚半も上げて西前頭9枚目に躍進した。破竹の勢いにも乗っているが「こういうときこそ一番怖いんで、ちゃんと気は引きしめているつもりです」と地獄の底を見てきただけに、27歳の苦労人に浮かれるところは全くない。

 端正な顔立ちで番付の上昇とともに、人気や知名度はさらに高まっていくに違いない。スター性も兼ね備えるが、インタビューでも喜びは控えめでどこか昔ながらのお相撲さんの雰囲気も漂う。得意のもろ差し速攻はますます磨きがかかり、年内には新三役も狙えそうだが、今後は回り道して培った精神力も大きな武器になってくるだろう。

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