政府が3%の賃上げを求めている今年の春闘（春季労使交渉）は、14日、大手企業の集中回答日を迎えた。人材確保のためにも企業側が組合側に歩み寄る形となり、トヨタをはじめ、昨年を上回る回答が相次いだ。
この労使交渉がうまくいかないとき、集団的に仕事を放棄する「ストライキ」が起こる。しかし、近年はストライキが減り続けている傾向にあり、16年間で約5分の1に減少。ストライキが減った理由として、企業側と労働組合側の労使交渉がうまくいっていること、ストライキを受け入れる世間の風潮がなくなっていることなどが挙げられる。
14日放送の『けやきヒルズ』（AbemaTV）では、このストライキについて紹介。2004年、当時日本プロ野球選手会の会長を務め、日本プロ野球史上初のストライキに関わった古田敦也氏に話を聞いた。
2004年6月に近鉄バファローズの親会社の財務状況が厳しくなったことで、オリックス・ブルーウェーブとの合併構想が表面化。当時、古田氏は労働組合である日本プロ野球選手会の会長で、選手側の代表に立っていた。ライブドアの社長を務めていた堀江貴文氏から買収の申し入れがあったが、オーナー会議の意向でこれは拒否される。同年7月には一部球団オーナーから「1リーグ10球団化」構想の話も持ち上がった。そして9月、合併凍結などを求め、古田氏が会長を務めるプロ野球選手会は、球団側、日本野球機構（NPB）に団体交渉（労使交渉）を行った。
「普通は“身売り”として球団が売られてしまう。これはよくある話。僕たちも最初は身売りだと思っていた」と話す古田氏。しかし、身売りではなく、実際に発表されたのは「オリックス・ブルーウェーブ」との合併だった。古田氏は「合併は選手としても困る。選手会としても合併となれば、多くの選手や、裏方、球団関係者までこれからどうなるのかという不安が高まる。買い手がいるのに売らず、なぜ合併するのかという話になった。会社は何百億にもなる資産である球団を売ればいいのに、オリックスにあげるような形で話が進んでいることに疑問を持った。これは後ろに大きな話があるんだなと思い、団体交渉を申し入れた。その後10球団に削減という話が報道で出てきた。しかし実のところ『1リーグ8球団』にしようと言い出すオーナーもいた」という。
古田氏は当時について「プロ野球っていうのはファンの方があっての話なので、ファンの方に理解を得られていないにもかかわらず、勝手に球団数を減らすというのは……。しかも、生活の一部のように応援してくれた方々がいるのに、そのファンたちに説明することなく球団をなくすというのはあり得ない話。今後のプロ野球界に汚点を残してしまうと思い、交渉しました。このときはストライキする気はなく、ちゃんと交渉しなきゃいけないと思っていました」と振り返る。
同年9月に合併の凍結などを求める選手会が球団側とNPBに団体交渉を行うも決裂。古田氏は「合併はしない方がいい、球団を売った方がいいと交渉したが、絶対ダメだと言われた」と話す。「せめて1年間くらいはファンに説明する時間を作るために凍結してほしいと説得してもダメだと言われた。後に新規球団を入れていくという話の流れにもなったが、全部ダメだと言われた」。そして、古田氏が会長を務める選手会側は、9月18日、19日の2日間にわたってストライキを決行する。
その結果、11月に「東北楽天ゴールデンイーグルス」が誕生することとなり12球団による2リーグ制は守られた。
「球団側やNPBと会議で向き合うことは、シーズン中ということもあり、大変だった」と話す古田氏。午前中に球団社長と交渉、夜は試合に出て、試合後は労働法などの勉強をしていた。交渉するには勉強が必要で、弁護士などにも相談していたという。
「交渉なのでしっかり勉強していないといけなかった。相手方がわざと難しい専門用語を使ってくることが多かった。『野球選手はどうせ専門用語知らないだろ』と小ばかにされて、交渉がそこで止まってしまったりしていた。なのでしっかりと自分の想いを伝えて交渉を続けなければいけないと思い、弁護士さんとともに労働法などの勉強を続けていた」
古田氏のこの行動は、ファンに圧倒的に支持された。ちなみにストライキ中は報道が加熱していた事もあり、家にずっとこもっていたという。古田氏はこの結果について「ファンのおかげ」と話す。「ストライキの後、世論調査でファンから90%以上の『12球団必要だ』という声をあげてもらったことで今がある。ファンの方が勝ち取った勝利」だと語った。
古田氏が立ち上がり2日間のストライキが無ければ、野球界に今のような盛り上がりはなかったかもしれない。
（AbemaTV／『けやきヒルズ』より）
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