3月28日に中学生として最後の対局を終えた将棋の最年少棋士・藤井聡太六段。中学2年時にプロデビューを果たし、ここまで通算71勝12敗、勝率0.855は圧巻という他ない。今年に入り羽生善治竜王、佐藤天彦名人らタイトルホルダーに勝利するなど、日本中の話題をさらった29連勝時より、はるかに強くなっているというのが、将棋界隈での定説だ。ただ驚くべきは、藤井六段が中学に通い続けながら勝ってきたということだ。
藤井六段は2016年12月24日のデビュー戦以来83局も指した。約15カ月間で月平均5.53局。毎週1、2局こなしてきた。日本将棋連盟の配慮もあり、週末に対局を寄せた時期もあったが、勝ち進むに連れて日程も詰まり、平日の対局も増えた。平日は学校、毎週末に1対局+αといったところだ。
移動の負担も多かった。「西の天才」藤井六段に対して「東の天才」と呼ばれる増田康宏五段は、「学校に行きながら1年間将棋を指すのは、スケジュール的にも大変だと思いますよ。東京の対局も多いですから、遠征で指して、帰って、学校に行って。本当に大変だと思います」と説明した。愛知県瀬戸市在住の藤井六段の“ホーム”は、大阪市福島区の関西将棋会館。これだけでも十分な長距離移動だが、東京都渋谷区の将棋会館となれば、さらに長距離だ。
対局の開始時間は、午前10時が圧倒的に多い。瀬戸市から当日移動というわけにも行かず、対局に備えて前泊することになる。また竜王戦、順位戦など持ち時間が長い対局であれば、終局も深夜におよび、もれなく東京泊が確定する。つまり東京で対局するとなれば前泊、当日泊という2泊3日の「対局ツアー」が繰り返されていたわけだ。学校に通わない他の棋士でさえ、移動が続けばハードなところを、15歳という体力的にピーク前の中学生が何度も繰り返していたとなると、相当の疲労もあったことだろう。
既に発表されているとおり、藤井六段は4月から高校に進学する。当たり前の話だが、藤井六段が棋士だからといって、学校の授業が融通されることもなく、1人の生徒として扱われる。より負担が増えることも予想されるが、他の棋士からは「藤井さんなら大丈夫だと思います」と心配する声は聞かれない。将棋と学業、うまくバランスを取りながら過ごすことで、“高校生棋士”藤井聡太六段は今後もさらに大きくなる。
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