「日本の4番」が完全体になれば、まだまだこんな数字では終わらない。そう断言するのは現役時代、西武・ヤクルトで活躍した野球解説者の鈴木健氏だ。「筒香選手のポテンシャルからしたら、まだ6割程度じゃないですか？本人も別に調子がいいと思っていないと思いますよ。日本の4番ですからね」と、最近10試合で打率.469、3本塁打と打ちまくる横浜DeNAの主砲・筒香に満足していない。鈴木氏が注目しているのは「彼のバロメーター」という打球の飛距離だ。
キャンプから直立不動のような構えで打席に立ち、オープン戦でやや膝を曲げ、最近では元のフォームに近いオープン気味に構える。いろいろと模索を続けた筒香に、鈴木氏は「元のフォームといっても、感覚を取り戻すのに時間がかかったんだと思います。それが今になって合ってきた、普通に戻っただけですね」と、本来の筒香の姿に戻っただけで、高打率をマークしていてもそれが絶好調ではないという。「直立不動の時でも、動き出してからトップの位置は従来と同じでしたからね。目の高さや位置が変わっただけで、球がブレて見えたりするので、その分打ち損じも多かったんじゃないでしょうか」と、シーズン序盤の結果を分析した。
元に戻った筒香のどこを見れば調子がわかるのか。それはやはり、あの圧倒的な飛距離だ。「ようやく飛距離が出始めましたね。ホームランがスタンドの上段じゃなくて、場外に飛び出し始めている。それが彼のバロメーター。詰まった時にギリギリに入る、芯に当たったら場外に行ってしまう。そんな感じですかね」と、ベストインパクトでなくてもフェンスを越え、完璧にとらえればスタンドを越える。ホームランが出る出ないではなく、どこまで飛ぶかでようやく「打者・筒香」の状態が判断できるというわけだ。
日本各地が梅雨入りし、その後には暑い夏が待っている。カードも2周、3周とし打者は投手のボールに慣れ、一方で投手は疲れが出始める時期だ。「バッターは球の軌道が見えてきますからね。逆にピッチャーはどうしても球が遅くなったり春先よりキレがなくなってきたりします」。本来の姿に戻っただけで、他を圧倒するパワーを見せ始めた筒香。夏の訪れとともに完全体となればポイント、タイミング、角度がそろった打球を目で追うのが困難なほど、ボールは弾け飛んでいく。
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