持ち時間5分、1手につき5秒が加算される超早指し戦「AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治」の決勝トーナメント1回戦(三番勝負)最後のカード、羽生善治竜王(47)と佐々木大地四段(23)の対戦が8月19日に放送され、羽生竜王が2連勝で佐々木四段を下し、ベスト4入りを果たした。準決勝では新鋭・佐々木勇気六段(24)との対戦が決定。別ブロックでは藤井聡太七段(16)と高見泰地叡王(25)が勝ち上がっており、羽生竜王と若手3人で「最速・最強」の座を争うことになった。
チェスのフィッシャールールを参考に、自ら着想した今回の超速将棋。決勝トーナメントからの登場だったため、予選参加者の様子は伝え聞いていたが、いざ体験してみると将棋界のレジェンド・羽生竜王は「かなりハードなルールだなということを結構、痛感しました」と苦笑いした。
初手合いとなった佐々木四段の若さと勢い、不慣れな超早指しに苦労した。155手と長手数になった将棋は、終盤に入っても優劣が行ったり来たりの大混戦。他の追随を許さない実績を誇る第一人者も、何度も眉間に皺を寄せた。対局前にはかなり緊張していた佐々木四段が対局後「チャンスのある将棋だった」と振り返るほどだった。
どんなに苦しんで、最後の一線を越えさせないから強い。敗戦しながらも勢いづいた若手が積極的に攻めてきた第2局。時間を消費し、今回も苦しんだがここから巧みに粘り続けた。「中盤の途中あたりは、私の方がかなり苦しい展開になっていたと思います」と、自ら劣勢を自覚しながら、それでも半歩、1歩とにじり寄った。結果は1局目よりもさらに長い182手での勝利。20~30分ほどで終わる将棋の中でも、懐の深さを見せて勝ち切った。
天才棋士・藤井七段、初タイトルで波に乗る高見叡王、そして準決勝で対戦するイケメンファイター佐々木六段。若手有利とされる早指し戦だけに、羽生竜王であってもこの中で優勝するのはひと苦労だ。「あっという間に時間がなくなるので、そういう意味では非常にハード。目まぐるしく状況が変わるので、そこで的確に素早く反応するっていうのが大事なんだなと思いました」と振り返った。将棋界の偉大なる壁が若手たちを跳ね返すのか、超えるものが現れるのか。「最速・最強」決定戦も、いよいよ佳境に入ってきた。
◆AbemaTVトーナメント Inspired by 羽生善治 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治竜王が着想した、独自のルールで行われる超早指し戦によるトーナメント。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生竜王が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選は藤井聡太七段が登場するAブロックからCブロックまで各4人が参加し、各ブロック2人が決勝トーナメントへ。シードの羽生竜王、久保利明王将を加えた8人で、最速・最強の座を争う。
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