9月24日さいたまスーパーアリーナで開催された「K-1 WORLD GP」のスーパーフェザー級・スーパーファイトで皇治がスタウロス・エグザコスティディスを、延長の末判定2-1で勝利し、12月大阪開催のK-1での武尊との対戦が一歩現実味を帯びてきた。
3月の「K'FESTA.1」スーパーフェザー級トーナメントで「武尊も苦しめたスタウロス」という存在は皇治にも重くのしかかっていただろう。試合は1Rから、共にガードを固め慎重な試合運びをしながら、得意の連打をみせるスタウロスにローやアッパーなどの強打で応戦する皇治という展開から2R以降は互いに引かない打ち合い、体力が消耗した3Rは両者積極的な攻撃にみせつつも決定打に欠く判定は30-29、30-30、30-30のドローで延長線へ。
延長では、ローの打ち合い、皇治のヒザやローのコンビネーションなど僅かだが手数をみせ、一方のスタウロスのバックブローの空振りや、途中マウスピースが外れるアクシデントなどもあり、10-9、9-10、10-9本当に気持ちひとつ抜けたくらいで皇治が薄氷の勝利を掴んだ。
皇治といえば、K-1きってのトラッシュトーカー。今回のスラウロス戦を前にした会見でも対戦相手をキューピーと揶揄、対するスタウロスも『ザ・シンプソンズ』のバート・シンプソンの人形を持ち込んで応戦する場面も。今回に限らず次々と舌戦を仕掛ける手法でK-1をかき回してきた皇治だが、同時にその口に偽りのない有言実行のファイトと、大阪からメジャーな戦いの場K-1に活躍の場を求め食らいついてきた、そのひたむきさに心奪われているファンも多い。
29歳、キックボクシングの時代からの戦績は、今回の試合を加えても40戦24勝14敗と決して順風満帆スター街道を走ってきた選手ではない。Krushでの4年間の成績も勝ったり負けたりと凡庸、K-1参戦後の2016年からも卜部功也、大雅などに1回戦で敗れる脇役だったが、今年3月の第4代スーパー・フェザー級王座決定トーナメントで、大本命の卜部弘嵩を破り俄然注目が高まった。
今回の大会では、先日逝去した山本KID徳郁さんへの追悼の気持ちをこめてKIDさんの入場曲T.O.K.『I Believe』で入場。散々罵ったスタウロスにも試合が終わると「スタウロスありがと ギリシャから来てくれたから皆の前で試合が出来た 色々言ってごめん 俺は認めとる奴しか挑発しない 心から尊敬してます ホンマ強かった 一緒に盛り上げてくれてありがと」と本音を綴り、対戦相手を讃えた。
リング外での口の悪さの一方で、格闘技に対する愛と先人への敬意、また試合後は対戦相手への感謝の言葉でノーサイドという、試合前は悪い人、試合後はいい人という掴みどころのないギャップもまた皇治の人間臭い一面だ。
スタウロス戦後のマイクパフォーマンスも、武尊にとっては面白くないものだった。
「魔裟斗さんと盛り上げたKIDさんが亡くなられて、リスペクトしてるから入場曲を使わせてもらいました。KIDさんに1つでも安心してもらえるよう、天心・堀口ええやないの。タケポンとこっちはこっちで盛り上げようや」と、武尊への対戦要求、そして那須川天心と堀口恭司の名前を出し挑発してみせた。
武尊も「最初にあれだけ言っといて、ちょっといい人感を出そうとするあれはズルい」と困惑しつつも、このひと言で皇治は夢にまでみた武尊との対戦を一歩引寄せたように思える。
今回の大会でも欧州で絶対的な実績のあるスペインのダニエル・ピュータスを僅か1R2分で撃破、あまりにも強すぎる武尊を前に、仮に対戦が決定したとしても「対策よりもブン殴ってやるだけ」とざっくりとした戦略を口に意気込む皇治に勝算はないというのが大方の見方だろう。
皇治はこう語る「オレは天才じゃないし、地べたから這い上がってきて、今やK-1、しょってると思ってるから。12月もオレがおらな、開催できないと思ってる」。額面的にとれば非常に謙虚だが自信過剰という煮ても焼いても食えない彼らしいコメント。12月8日(土)エディオンアリーナ大阪、地元凱旋で何らかのインパクトを必ず残すことだろう。