「(PTA役員に)当たってしまったら拒否権はないという感じだった」
「仕事の都合をつけたりしながらやるのが大変でした」
働く世代にとっては負担が重い「PTA」活動。9月末、さいたま市教育委員会が市内の学校宛てに「PTAの入会は任意」という通知を出した。PTAは強制的に参加させられるものではないことを、保護者に周知するよう求めるものだ。
PTAとはParent-Teacher Associationの略で、(1)地域社会への協力、(2)保護者の教育、(3)学校教育への協力・連携を目的としたもの。具体的な仕事として、運動会や学芸会などの学校行事の手伝い、登下校時の旗振りや地域の安全パトロール、卒業式などでの記念品の贈呈、ベルマークの収集・集計などがある。
「全員参加で平等に」という印象の強いPTAだが、その根拠はどこにもない。しかし、実際には疑問をはさむ余地のないまま会員になっていることもあるという。PTA問題に関する著書のある、ジャーナリストの黒川祥子氏は次のように話す。
「自分の意思で(PTAへの)加入は決められます。だから、参加しなくて全然大丈夫です。役員決めの恐怖というのが悲鳴にも近い叫びになっているというか、苦痛の関門となっています」
新年度、新しく担任となった先生の話を聞こうと保護者会に参加すると、先生の話はすぐに終わり、教室に入ってきたのは先輩ママのPTA役員たち。先生も教壇を役員に明け渡す。なぜか出入り口の前にも役員が立ち…「役員を決めるまでは誰も帰れません」。仕事はもちろん、介護やひとり親家庭であることも考慮されなかったということだ。また、いざPTA活動が始まると、運営の非効率さに面食らう保護者も多いという。
そんなことを想定してなのか、東京都のある教育委員会が新1年生の保護者向けに配布したPTAの冊子では、「どうか初めから逃げ腰にならないでください」という文言が掲載されていた。
「意味が分からないことをやらされる。メールで済むことをなぜこんなに頻繁に学校に行って会議をしなければならないのか。(非効率の)最たるものがベルマークですね。とにかくその作業のばからしさ」(黒川氏)
ベルマークは、協賛企業の商品についているマークを集めて送ると、点数に応じて学校の備品などがもらえる仕組み。PTAでよく行われる作業は、家庭で切り取ったベルマークを回収し、それを一つひとつ企業ごとに分けて台紙に貼ること。非常に小さいため、吹き飛ばないようにマスクをつけて作業するところもあるとか。しかし、30人で作業してもわずか数千円にしかならないこともあるなど、費用対効果に疑問がもたれている。
「苦行、苦役ですよね。仕事を抜けてそれをしなければならない意味も意義も、どこにもないと思います」(黒川氏)
多くの保護者が疑問を抱える状況で、「PTAは任意」ということが明確になれば加入しない人が増えるのではないか。通知を出したさいたま市に聞いてみると、細田眞由美教育長は「任意団体ということを周知したら(加入者が)減るじゃないという発想は、私たちは全くないわけです。いま片働きの人が少なく、共働きの夫婦のほうが多いじゃないですか。片働き時代の形のPTA活動は成立しません」とコメント。持続可能なPTAについて一緒に話をしていくスタンスであることを主張した。
そんな中、保護者は「PTAをやらない」という選択肢を選ぶのか。聞いてみると、次のような答えが返ってきた。
「それってどうなの? 子どもとの関わりを切るっていうこと?やっぱり『やれる人はヒマなの?』ってなっちゃう」(PTA経験者の女性)
「(役員は)進んでやりたい感じではないけど、やらなければいけないかなとか。子どもが在校している以上はって」(PTA役員経験者の女性)
「できればやりたくないけど、子どものためにはお願いされたら断れないかもしれない」(PTA活動する先輩ママから情報収集する女性)
任意だからといって、「やめたいと思ってもやめられない」のが現実ではという声もあがっている。
「入りたくはないけれど、子どもが人質にとられている。子どもが差別されるんじゃないかとか、いじめにあうんじゃないかとか。PTAって本当に必要なのかというのがわからないんです。同調圧力と強制力の中でやらされる、前例がないことは認めない。どんどん皆さん苦しくなっている」(黒川氏)
PTAのこうした現状を受けて、アーサー・ホーランド牧師は「子どものことを思いやってスタートした手段のはずが、いつの間にか目的になってしまって、そこでやらなければならないことに囚われている。改革なしに同じことを繰り返してきている」と指摘。続けて、「逆に新しいことを生み出すチャンス。働いていて参加できない母親の意見なんかを取り入れたら、新しい改革がスタートするんじゃないか」と述べた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
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