
タイミングを選ばず届く、会社からのメール。デート中や旅行中に会社からのメールが届き、必死になって返信してしまうことはないだろうか。街の人からは次のような声があがる。
「家族でテーマパークに行っているときに、待ち時間に携帯を開いたらメールとか電話がきていたときはちょっと…。うーっとなりましたね」
「旅行中とかすっかり忘れているときにふと見ると、結構ショックというか現実に戻りますよね」
プライベートの時間にも常に仕事がつきまとうという煩わしさから逃れるため、いまニューヨークでは勤務時間外や休みの日に、従業員にメールなどの返信をさせることを禁じる条例案が議会で審議されている。

提案した議員によると、勤務時間外に会社からメールが来た場合、従業員は返信してもそのまま放置してもどちらでも構わないという。しかし、会社から対応を強要するような内容を送ることは禁止され、規制の対象となる。条例案では、違反した雇用主は従業員に対し、最大で500ドルの罰金を支払わなければならない。
「(勤務時間外のメールは)なくしたほうがありがたいと思います。切り替えたほうが仕事もちゃんとできると思うし」
「断れる人と断れない人がいると思うので、断れない人からするとそういうのがあったほうが逃げやすいかもしれない」

このように、勤務時間外に仕事関連の連絡を絶つ権利は「つながらない権利」(right to disconnect)とよばれ、法律で保護されている国もある。そのうちのひとつフランスでは、2017年に法律が成立。仕事とプライベートを分離する問題のほか、健康上への影響も指摘され、従業員が50人を超える会社に対しては勤務時間外の「完全ログオフ権」を認める条項を策定するよう義務付けられた。
一方でフランスのメディアでは、会社からの要求がなくなったとしても、個人の仕事に対する考え方や業績への野心は変わらないという指摘もされている。同様の意見は日本でも。
「僕は営業なので、お客さんだとすぐに(メールを)返さなきゃなと。(業績につながるのも)あると思いますね」
「月曜に仕事に行っていきなり(連絡を)知るよりは、事前にもらっていたほうがいい。休みの日でいやになりますけど、ありがたいこともあるので」
「週末に(メールが)来たら、相手も急いでいるというのもあるし即返事したほうがいいと思う。相手本位で考えれば、必要なことであれば返事すればいい」

日本でも、休暇中のメールを受け取らない、緊急性のないメールは自粛するよう呼びかけるなど、企業単位での「つながらない権利」への取り組みはあるが、条例や法制化の目立った動きはまだない。
「きょう絶対に連絡を取らなきゃいけないというのが何かしらあると思うんですけど、そういうときに罰せられちゃったら仕事が成り立つのかなと」
「結局相手がいる話なので、国全体というかルールが決まっていればできるかもしれないけど、現実的には難しいかもしれない」
「我々がどういう社会を作っていくか次第じゃないですか。非常識なメールとか電話もたまにありますけど、そういうものをみんながやりだしたら法律が必要になってくるのかと思います」

街の人々は賛否分かれる「つながらない権利」。元朝日新聞記者でBuzzFeed Japanの神庭亮介氏は、「メールを至急返せと言われなくても『返さなきゃ』と思ってしまう人と、どんどん返したいという人もいる。返す人と返さない人とで業績に格差が生まれてしまうのはどうなのか」と懸念点を指摘。自身は「返す人」だというが、「ワークライフバランスとして一定の枠組みはあっていいのかもしれないが、メディアなどは事件があった時に動かなきゃいけないということもあるので、業種ごとにきめ細かく見て欲しい」と述べた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)




