リスキーで、なおかつロマンのある対戦だった。11月3日のK-1さいたまスーパーアリーナ・コミュニティアリーナ大会。ここで実現したのが、ジョーダン・ピケオーvs木村“フィリップ”ミノルだ。
ピケオーはKrushのスーパー・ウェルター級(-70kg)チャンピオン。木村はKrushで1階級下、ウェルター級(-67.5kg)のベルトを巻いている。K-1のトーナメントでは優勝できていないピケオーだが、負けた相手はいずれもチャンピオンになった選手だ。また日本人との対戦では、これまで全勝している。
Krush王座の防衛を続けていたピケオーは、もう相手がいないと木村戦を要求。これを木村も快諾し、K-1でのKrush王者対決が決まった。
これはいわゆる「因縁の対戦」ではない。純粋に「強いもの同士が闘ったらどうなるか」の試合。ピケオーは「ミノルはアグレッシブだから自分から前に出る必要もなさそうだ」と語り、木村も「世界の闘いを見せる」と意気込んだ。
いざリングで向き合えば、やはりサイズの差、パワーの差はあったように見える。それでも木村は臆さず真っ向勝負で前に出た。だから余計にピケオーの強さも目立つ。木村はこの試合、計4回のダウンを喫することになった。
1ラウンドはパンチからヒザにつなげる連打。2ラウンドにも2度倒され、最後は3ラウンドに連打を食らってダウン、試合終了が告げられた。
逆に言えば木村は3度持ち直し、そのたびに反撃を試みている。試合終了直前にも「これが当たったら分からない」と思えるほど鋭いパンチを放っていた。
「ミノルが前に出てきてくれたから倒せたんだ。彼に悪い部分はなかった」
ピケオーは試合後にそう語っている。ここから、ピケオーはウェルター級に本格参入。K-1王座も狙いたいという。チャンピオンの久保優太にも異論はない。まして久保は木村の同門であり、木村が最も信頼を寄せる男である。木村を倒したピケオーに勝つべく立ち上がるのも自然な流れだ。
試合後、久保もリングに上がり対戦決定のムードに。しかし、この階級で先に実績を積んだ城戸康裕と久保のタイトルマッチが内定しているという事情も。
本来は今大会で久保vs城戸が行なわれるはずだったのだが、久保が交通事故で負傷したため流れていたのだ。
この状況にピケオーは「3月に2人と闘ってもいいよ」と余裕の構え。木村も決して株は落としていないだけに、再起戦も含めウェルター級が一気にアツくなってきた。