10月に誕生したプロ麻雀リーグ「Mリーグ」。7チーム、21選手が毎週激戦を繰り広げる中で、最も多忙な選手が俳優としても活躍するTEAM雷電所属の萩原聖人だ。テレビの連続ドラマに舞台など、俳優としての仕事をしっかりと務めながら、プロ雀士・Mリーガーとしては自身の対局時だけでなく、チームメイトの応援にも連日駆けつけ、声を飛ばす。「想像以上に大変でしたけど、めちゃくちゃ充実しています」と、目を輝かせる萩原に、俳優兼プロ雀士として過ごした、この2カ月半を聞いた。

俳優兼プロ雀士・萩原聖人、超多忙でも「めちゃくちゃ充実してる」苦悩の2カ月半からの大復活
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――10月にMリーグが開幕し、そこから俳優兼Mリーガーとして活動することになりました。振り返ってみて、この2カ月半はいかがでしたか。

 萩原 想像以上に大変でした(笑)プロになる前、遊びで麻雀をしていたころは、仕事が遅い時間に終わっても、明日休みだったら「ちょっと今日、麻雀できるな!」みたいな感じだったんですけどね。やっぱり楽しんで打つのと、プロとして何かを背負って打つのと、その違いを痛感していますね。

――俳優業とプロ雀士業、気持ちの切り替えなどはどうしているんですか。

 萩原 してないです(笑)今はどっちも目一杯でやっています。どっちの仕事も好きで楽しいんですけど、逆にどっちの仕事も嫌いでつらい。ただ今、Mリーグが1年目のこの時期に、疲れたとか言ってる場合じゃないし、やらなきゃいけないことが山積みなので。Mリーグに特化して言えば、麻雀以外でやれること、やらなきゃいけないこともたくさんあるんですよ。

――「麻雀以外」という意味では、萩原さんは開幕前から俳優としての仕事の場でも「麻雀」という言葉をたくさん発信していました。

 萩原 たまたま僕が俳優をやらせてもらっていて、メディアからの注目度もある程度あったので、そこは最大限使って宣伝をさせてもらいました。常にMリーグのことは考えているんです。今日はドラマや映画、今日はMリーグって、きれいにゼロ、ゼロって切り替えるのは、僕は無理なんですよ(苦笑)Mリーグに来ていても「明日のセリフ、覚えなきゃ…」とか考えているくらいのほうが、人間らしくていいかなって思っています。

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――当初描いていたMリーグのイメージ、俳優兼プロ雀士という生活のイメージに、2カ月半経った今と違いはありますか。

 萩原 今になって、自分がどんなイメージを膨らませていたかと聞かれると、あんまり考えてなかったかもしれないですね。とにかくいい意味で、目先のことを充実させていくことの繰り返し。ただ今回、Mリーグというのは1人じゃない(1チーム3選手)ところに、たくさん救われています。何か困った時には相談できるし、いろんな意見を聞くことができるので、そのバランスはすごく大きいです。麻雀も役者も、基本的には孤独に戦うんですけど、精神的に助けてくれるチームメイトだったりスタッフだったりがいることに、とても助けられています。

――10月1日の開幕戦に登場して、初勝利を得るまで2週間以上(10月18日)、さらに2勝目を得るまで50日もかかりました。かなり苦しい思いなどがあったと思います。

 萩原 ありましたよ。悔しいし、忸怩たる思いでしたし。ただ成績が悪いことで周りの人に気を使わせたくはなかったですね。自分は自信があってこの場に来たし、まだ終わったわけでもないから、自分が打っている麻雀に間違いがあっても、スタイルとしては「こうだ」というものをやった結果なので、我慢しようと思っていました。

――50日ぶりの勝利の際には、その苦しみからの勝利にファンが大いに沸きました。

 萩原 他のチームの人からしたら「まだまだ2勝しただけじゃねえか」って思ってたと思いますよ(笑)ずっと「今に見てろよ」って思ってましたけどね。Mリーグは結局、ブームみたいなことにならないと、なかなか浸透しないと思っているんです。そのブームのきっかけに僕の1回のトップ、産みの苦しみで取ったトップが、パッと話題になるのが結構重要だとも思っています。もし僕が好調で、当たり前のようにトップを取っていたら、そんなに話題にならなかったもしれないですし。

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――「人生で一番トップが取れなかった」という時期に、俳優業の現場でも麻雀の話を自らすることは、苦しいものもあったかと思いますが。

 萩原 いや、僕は結果が悪くても、まずはMリーグを知ってもらうことが全てなので、自分の成績が悪いからといって、麻雀の話をしないとか、話すのが苦とかは、全然思わなかったですね。Mリーグは先が長いじゃないですか。今年のリーグがまだ長いという意味ではなくて、これから何年も続く未来という意味で。だから僕の成績が悪いことだって、結果的には自分のためになるとも思ってるんですよ。まずMリーグを知ってもらって、そのおもしろさを伝えるのが、僕ら選手の重要な役割だと思うし、21人の共通言語として持っておかないといけないのかなって思います。

――俳優に例えるなら、復活劇を演じる役回りになったということでしょうか。

 萩原 ちょっと皮肉な結果でもあるんですけどね。ただMリーグも2カ月、3カ月と経っていく中で、選手たちがいい意味でも悪い意味でも慣れてきたところで、こういう話題ができたところで、世の中の人々がちょっとでも「ふーん」と食いついてくれたのはよかったかなあと思っています。放送にしても、ただ1位がいます、3位がいますじゃなくて、1回1回に話題になる展開や手が生まれてくるようになるといいんですけどね。記事を書かれる人だって「今回は書くことないな」っていうのも出てくると思うし。今後はトップの人だけじゃなくて、内容に焦点を当てたものとか、隠れたファインプレーを伝えるようなものが出てきてくれるといいですね。

――情報発信という意味で、萩原さんから見てこの2カ月半で変わってきた、成長したという選手はいますか。

 萩原 身近な方には感じますね。もちろん僕が、瀬戸熊さんに「変わった」なんていうのも失礼な話ではあるんですが、黒沢さんとかも変わりましたし。たとえば試合後のインタビューも、ダラダラしゃべっても仕方ないから「30秒っていう感覚で行きましょう」とか、そういう話はしますよ。他のチームの選手とは、野球とか他のスポーツと同じで、ちょっと距離感が難しいんですよね。あの先輩に聞きたいけど聞けないとか、今の時期なら、一緒に自主トレやってくださいと言うのも大変とか。ある程度の選手になってくると、自分の財産を簡単になんでもかんでも教えてもらえると思うなよっていうところも出てくると思うんです。

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――初めて迎える年末はチームが3位、個人としては18位となりました。今後の抱負や意気込みをお願いします。

 萩原 もちろん勝ちたいし、リーグを盛り上げるためにわざと負けることもないし、そのために自分が犠牲になるつもりはなくて、勝って盛り上げるのが最高の形だと思っています。ただ、それを常に目指して出た結果がそうじゃなかったとしても、それは恥じるものではないし、受け止めます。幸いMリーグにはオフ期間というものがあるので、麻雀ではそこでいろいろとできることもありますから。人ってね、やっぱり暇はダメなんですよ。暇が欲しい欲しいって思うけど、やることが前向きであれば、どんなに忙しくてもめちゃくちゃ充実するなっていうことを感じていますね。俳優だけでとにかく忙しかった時は、少し義務のような感じがしましたけど、Mリーグに入ってからは、どんなに忙しくても一切気にならないです、何もかもが。

【聞き手・構成 小松正明】

(C)AbemaTV


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