2019年も新たな“藤井フィーバー”到来を予感させる快勝劇だ。将棋界の最年少棋士・藤井聡太七段(16)が、“現役最強”との呼び声高い豊島将之二冠(28)と、新人王戦優勝記念対局で、89手で勝利した。昨年10月に優勝した新人王戦の優勝者が、トップ棋士と対戦する企画で、藤井七段は8つあるタイトルのうち、唯一複数冠を持つ豊島二冠に対して、相手の得意な戦型に果敢に飛び込むと、新たな工夫を繰り出して快勝。周囲からはタイトル獲得の最年少記録を期待される中、その可能性を大いに感じさせる勝利を挙げた。
確実に、天才棋士は将棋界の頂点に近づいている。そのことを証明するには十分な勝ちっぷりだった。非公式戦の記念対局とはいえ、最年少の天才棋士と、昨年初タイトルから一気に複数冠を手にした実力者の対決。AbemaTVで解説を務めた森内俊之九段(48)も、「今、最前線で戦われている2人の対局」と注目していた。その言葉どおり、戦いも現在の将棋界の最先端トレンドを行くものが採用され、その中にお互いの工夫が織り交ぜられた。この状況で、輝く一手を指し続けたのは藤井七段だった。森内九段が「本当に完璧な指し回し。見ていて本当に強いなと思いました。今年の活躍を予感させる対局だったかと思います」と絶賛する、会心譜となった。
対局後、藤井七段は公式戦、非公式戦で1回ずつ負けていた豊島二冠について「先の(8月の)棋王戦の時は完敗してしまって、豊島先生の強さというのは、普段の棋譜からも非常に感じていました」と語ると、「思い切りぶつかっていこうという気持ちで臨んだんですけど、もしかしたら本局も少し指せる展開になったかなというところで、なかなかそうはならなかったので、やはりそのあたりは、豊島先生の強さを感じました」と、快勝の中にも実力者の強さを肌で感じた。また豊島二冠は「序盤から押されるというか、棋王戦の時は割と自分の方がペースを握っていたと思うんですけども、今回の将棋は難しいような気もしたんですけど、自信がない局面が続きました」と16歳の天才の力を認めた。
今年は屋敷伸之九段(46)が持つ最年少でのタイトル挑戦(17歳10カ月)、さらには挑戦だけでなくタイトル獲得(18歳6カ月)の記録更新が期待される藤井七段。今年もその右手から放たれる一手に、目が離せない。
(C)AbemaTV