沖縄の基地問題に対する「大人」や「メディア」の態度に問題も?辺野古移設の県民投票に揺れる若者たちの思いとは
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(13枚)

 今月24日、米軍普天間基地(宜野湾市)の辺野古(名護市)移設工事について沖縄の人々の民意を問う「県民投票」が行われる。

 全41市町村の参加までには紆余曲折もあった。県民の意思は「賛成」「反対」の"二択"に割り切る事はできないとして、5市が県民投票への参加を拒否。そこで沖縄県議会は「どちらでもない」という第三の選択肢を盛り込むことにした。

沖縄の基地問題に対する「大人」や「メディア」の態度に問題も?辺野古移設の県民投票に揺れる若者たちの思いとは
拡大する

 しかし、およそ1500km離れた東京の若者は、「(県民投票について)全然知りません」「気にしたことないです。正直なところ、ニュースでやってるな~くらいしか‥」と、どこか他人事のような人も少なくない。沖縄でも、昨年9月の県知事選挙で20~30代が重視したのは、基地問題よりも自分たちの生活に直結する経済の活性化だったというデータもある。

 4日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、そんな若者たちにとっての基地と沖縄の問題を考えた。

■”ハンスト決行”元山さん「話をするきっかけに」

 "世界一危険"と言われる普天間基地のすぐ側にある住宅街の公園は、休日には大勢の家族連れで賑わう。風向きによっては米軍機が公園の真上を通る。ある30代女性は「子どもが怖がるときもたまにある」というが、別の30代女性は「男の子だから飛行機には喜ぶ」と話す。若い世代にとって、基地は日常になっている。20代の市民は県民投票に対する意識について「正直なところ、あまりない。みんな頑張っているとは思うが、あまり変わっていないような感じが強いので」と諦め気味に話した。

沖縄の基地問題に対する「大人」や「メディア」の態度に問題も?辺野古移設の県民投票に揺れる若者たちの思いとは
拡大する

 この県民投票の全県実施を願ってハンガーストライキを行ったのが、宜野湾市出身の大学院生で、「辺野古」県民投票の会代表を務める元山仁士郎さんだ。「基地のフェンスから300メートルくらいのところに住んでいたが、生まれたときからあるものだったので、疑問を持ったり、考えたりする対象ではなかった。基地の中で行われるバザーやフェスティバルに参加して、着色料たっぷりのケーキを食べ、アメリカっぽい生活も経験した。英会話の先生も軍属だった。だからアメリカに対する憧れもあった。伝統的な言葉や音楽だけでなく、DA PUMPの『U.S.A.』ではないが、基地が70年以上もあることも沖縄らしさになっているのではないかと思う。でも進学のために東京に出てきてから、地元・普天間とは違う空、教室があることに驚かされた。そこからなぜ自分の地元は騒音がしたり、怖い思いをしたりするのか考えるようになった」と話す。

沖縄の基地問題に対する「大人」や「メディア」の態度に問題も?辺野古移設の県民投票に揺れる若者たちの思いとは
拡大する

 また、元山さんは「県民投票の会としては、みんなで話し、考えて一票を投じようと呼びかけているので、あまり表立って"反対"という発言はしていない。そこはすごく気をつけている。しかし海兵隊に本当に抑止力があるのか、普天間基地が本当に返還されるのかといった疑問を持っている」とし、辺野古移設には反対の立場を取る。

 「今回の県民投票の正式名称は、『辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票』。なぜかと言えば、県知事がその権限を持っているから。よく誤解されるが、移設そのものの賛否を問うものではない。この県民投票を通して、沖縄戦と基地を繋げて考えたいと思っている。僕の祖父母もそうだが、戦争体験者が高齢化し、亡くなっていっている。基地ができるまでの過程や、その後の生活を見てきた世代と話せるラストチャンスになると思う。普天間やその他の施設の整理縮小を求める声と、辺野古新基地反対の声と、どちらを優先するのかについて、沖縄の人が決めるべきではないのか、基地の面積が減れば本当に負担軽減になるのか、それを話す機会を作りたいと思った」。

沖縄の基地問題に対する「大人」や「メディア」の態度に問題も?辺野古移設の県民投票に揺れる若者たちの思いとは
拡大する

 一方、昨年の知事選で自公が擁立した佐喜真淳氏の『支援する会』青年部長を務めた新しい沖縄を創る会の若手代表・嘉陽宗一郎さんは、「容認」の立場だ。「辺野古を抱えている名護の出身で、近くでキャンプをしたこともある。だから両手を上げて賛成と言うこともできないが、普天間基地の一日も早い移転を考えれば容認せざるを得ない。でも、容認に近いというような発言をすると、上の世代からは"君は歴史をわかっていない"と怒られる。戦争を経験された世代は基地、戦争につながるものは全て反対という価値観があるが、それは仕方ないことだと思う。ただ、対立が続いて突破口の見えない中、もう一歩先に進めて、別の沖縄というのを描いた方がいいんじゃないのかなと思ったりもする。もちろん僕も基地そのものについては疑問に思うこともあるが、色々なものを"ちゃんぷるー"して新しいものを作ってきたのが沖縄の歴史。移設については反対という人が多いと思うが、政権与党が推薦する候補を応援する中で話を聞いていると、"暮らしを優先したい"という思いを持っている人もいた。基地がある前提でどうやって現状を良くしていくか、というところを考えたい。県民投票をきっかけに、賛成・反対だけではなく、考える派が増えたらいいと思う」と話した。

■「大人」や「メディア」に問題も?

 さらに若者たちに話を聞いた。舟田琉人さん(18)は「『どちらでもない』と『反対』」で迷っている」、藤本雄太さん(21)は「本当に何にも知識がないので『どちらでもない』というよりわからない」と、決めかねている様子だ。

沖縄の基地問題に対する「大人」や「メディア」の態度に問題も?辺野古移設の県民投票に揺れる若者たちの思いとは
拡大する

 新垣康大さん(24)は「世代間のギャップに悩まされている」と話す。「大人が誘導にかかる。"裏切り者"とか"あの頃の自分を忘れたのか?"とか言われる。忘れたわけではなくて、その経験があったからなのだけど。押しつけが…。"話をして、聞いていくべきでしょう"と座り込みの人に言うと、"君は何も変わっていないね""結局君は基地賛成なのか、反対なのか"と反論され、話が噛み合わなかった。何のための反対運動なのかなと思って、ずっと葛藤している」。

 県外から移住してきた二宮あみさん(23)は「若者代表として県知事選について話をしてほしいと言われプレゼンをしたが、"沖縄に来て数年の子に代表する権利はない"と言われたり、"県外の人のくせに"と叩かれたりした。"私たちは沖縄県民"というのがすごく強く、県民大会で反対することが全てみたいになっていると感じた」と話す。

沖縄の基地問題に対する「大人」や「メディア」の態度に問題も?辺野古移設の県民投票に揺れる若者たちの思いとは
拡大する

 拓殖大学総長で、民主党政権時代に防衛大臣を務めた森本敏氏は「"我々だけが沖縄を分かっている、分かっていないくせに生意気なことを言うな"という対応はまずい。沖縄戦を経験した年配の人、返還を経験したその次の世代の人、そして本土とあまり意識に差がない若い人に分かれてしまっている」と指摘。

沖縄の基地問題に対する「大人」や「メディア」の態度に問題も?辺野古移設の県民投票に揺れる若者たちの思いとは
拡大する

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「世代によって、権力やシステムに対する見え方の違い、意識の変化というものもあると思う。年配の人は未だに"反体制""反権力"みたいなのが好き。そうではなく、きちんと一緒に向き合っていこうという発想が、全国的にも出てきている」と話す。

 さらに「"地元の人はもっと怒れ"論は福島でも聞かれたが、それは左翼の人の言う論理と同じで間違っていると思う。マイノリティの意見をあまり勝手に代弁しないほうがいい。沖縄はこれまでの選挙で何度も左右に分かれてきたが、実際の民意がどこにあるかはわからない。今回のように3択や5択がいいという話が出てくるのも、やっぱり割り切れない、もやもやした部分があるからだ。それなのに"是か非かどっちかにしろ"と踏み絵を迫ってしまえば、違和感を持つ人もいると思う。今回の問題の根本は、安全保障上の論点と、地元の人の受け止め方のすり合わせができていないと思う。基地の町に住んでいない人はやはり当事者意識を持てない。であれば、安全保障上、在日米軍は必要なのかどうかを考えることも、沖縄の人以外がこの問題を考えるきっかけにするためには重要ではないか」と訴えた。

沖縄の基地問題に対する「大人」や「メディア」の態度に問題も?辺野古移設の県民投票に揺れる若者たちの思いとは
拡大する

 2014年に沖縄県知事選挙に出馬、県民投票の実施も訴えてきた日本維新の会副代表の下地幹郎氏は「基地問題そのものが政党間の戦いになってしまった。選挙をやれば、争点は基地問題にしかならない。だから本土から来て素直に喋っても政党の狭間に入ってしまい、"何をお前は言っているんだ"みたいな話になってしまう。純粋に基地問題が話せるようにならないといけない。実は辺野古を強引に進めている安倍政権だが、ハリアーや空中給油機を岩国基地に持っていったり、嘉手納と普天間の訓練をグアムに持っていったりと、最も負担軽減をしてきたのも安倍政権だ。そういう話や、"なぜ本土の人が受け入れないのか"という話をすれば、皆が当事者意識を持てるはずだ。沖縄の苦渋を伝えるというのは今までどこのテレビ局もやってきた。でも、我々は過剰な負担を取って本土の方で受け入れてくださいと言っているだけであって、全ての基地をなくしてほしいとは言っていない。それが実現しないのはなぜなのかに光を当ててほしい」とした。

沖縄の基地問題に対する「大人」や「メディア」の態度に問題も?辺野古移設の県民投票に揺れる若者たちの思いとは
拡大する

 元在沖縄米国総領事のケビン・メア氏は「私も総領事だった時、事故・事件が県内の政争の具に使われていると感じた。つまり、基地問題解決をしたくないという政治家も多いということだ」と明かした。

沖縄の基地問題に対する「大人」や「メディア」の態度に問題も?辺野古移設の県民投票に揺れる若者たちの思いとは
拡大する
沖縄の基地問題に対する「大人」や「メディア」の態度に問題も?辺野古移設の県民投票に揺れる若者たちの思いとは
拡大する

 タレントの池澤あやかは「沖縄には何度も行ったことがあるが、どういうフックで興味を持てば良いのか。興味を持つかどうかは個人の自由だが、当事者意識を持たせてよって思う」とコメント、Instagramに特化したニュース動画を投稿、若者を中心に支持を集める『ONE MEDIA』編集長の疋田万理氏は「メディアが二項対立をつくってしまうという面があるが、どちらでもない中央のところにもっとフォーカスしたり、ハッピーなこともあるということを報じていかないと。そして、じゃあどうするかというHOWのところをもっと話し合えるように、政府も含めもっと説明する責任がある」と話していた。

沖縄の基地問題に対する「大人」や「メディア」の態度に問題も?辺野古移設の県民投票に揺れる若者たちの思いとは
拡大する

 3日夜、那覇市内でトークライブを開き「原発は安全だって言って東京に置かないでしょ?それは原発がやばいって知ってるから。基地を東京に置かない。基地を置くとやばいって知ってるから。知ってるから置かない、遠くにやるんです。それしかない。インスタのDMでメールが届いたんですよ。私の家の前にはバーがあって米兵が酒飲んで騒いでる。自分よりも身長が倍くらいでかい男たちが騒いでいて怖い。コンビニに水を買いに行けなかった。それがすごい怖かったと。そういう一個一個の悲しみにフォーカス、集中的にできる人間がいないからね。机上の空論ばっか語ってるからね。慣れちゃダメ」と呼びかけたウーマンラッシュアワーの村本大輔は、「沖縄には怖い思いをしてる人がたくさんいる。自分の孫がいると思って考えてほしい」と重ねて訴えていた。


▶放送済み『AbemaPrime』は期間限定で無料配信中

AbemaPrime - 企画 - 「別の沖縄を描いた方がいい」基地問題に”世代間ギャップ” 揺れる沖縄の若者(19/02/04) | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
AbemaPrime - 企画 - 「別の沖縄を描いた方がいい」基地問題に”世代間ギャップ” 揺れる沖縄の若者(19/02/04) | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
「オトナの事情をスルーする」 スマホ発の本格ニュース番組「AbemaPrime」。テレビよりもスマホが気になる若者たちが〝本当に知りたいコト〟を真正面から伝えます!平日よる9時から六本木・テレビ朝日…
AbemaPrime - 企画 - 県民投票で辺野古移設はストップ!?「賛成・反対・どちらでもない」沖縄に分断危機も(19/02/04) | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
AbemaPrime - 企画 - 県民投票で辺野古移設はストップ!?「賛成・反対・どちらでもない」沖縄に分断危機も(19/02/04) | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
「オトナの事情をスルーする」 スマホ発の本格ニュース番組「AbemaPrime」。テレビよりもスマホが気になる若者たちが〝本当に知りたいコト〟を真正面から伝えます!平日よる9時から六本木・テレビ朝日…
社会ニュース - 「不参加」5市も参加表明…沖縄県民投票は“3択案” | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
社会ニュース - 「不参加」5市も参加表明…沖縄県民投票は“3択案” | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
 不参加としていた市が態度を変えました。 沖縄県名護市辺野古の埋め立ての賛否を問う県民投票を巡っては、これまで5つの市が「賛成反対」の2択では多様な意見が反映されないなどとして不参加を表明していまし…
社会ニュース - 沖縄県民投票「どちらでもない」条例改正可決 | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
社会ニュース - 沖縄県民投票「どちらでもない」条例改正可決 | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
 沖縄県の辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票を巡って、県議会で選択肢を3択に改正する条例案が可決しました。 29日の沖縄県議会の臨時会で、玉城知事は来月24日の辺野古の新基地建設に伴う埋め立ての賛否…
社会ニュース - 辺野古埋め立ての県民投票 選択肢増やし全県実施へ | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
社会ニュース - 辺野古埋め立ての県民投票 選択肢増やし全県実施へ | 動画視聴は【Abemaビデオ(AbemaTV)】
 沖縄県名護市辺野古の埋め立ての賛否を問う県民投票の実施を巡り、県議会の与野党が選択肢を2択から3択に増やすことで合意し、全県で実施できる見通しになりました。 来月24日に実施される名護市辺野古の新…
"中立・公正な報道""沖縄メディアの現状"とは?八重山日報編集長「大手2紙は絶対の存在。洗脳されている部分があった」
"中立・公正な報道""沖縄メディアの現状"とは?八重山日報編集長「大手2紙は絶対の存在。洗脳されている部分があった」
 今、隠れた沖縄県民の声を伝えようとする小さな新聞社「八重山日報」がネット上で脚光を浴びている。挑む相手は、基地反対を唱え、沖縄でのシェア95%を占める「琉球新報」と「沖縄タイムス」の大手2紙だ。4月
AbemaTIMES
辺野古沿岸部の埋め立て工事開始をめぐってウーマン村本、宇野常寛、乙武洋匡が激論
辺野古沿岸部の埋め立て工事開始をめぐってウーマン村本、宇野常寛、乙武洋匡が激論
 14日、アメリカ軍普天間基地の移設に伴う辺野古への土砂投入作業が始まった。翌15日と16日に行われたANNの世論調査では工事を進めることについて、「良いと思う」が32%、「良いと思わない」が55%だ
AbemaTIMES
竹田恒泰氏「沖縄の基地負担が大きいというのは幻想だ」津田大介氏、森本敏氏らと沖縄問題を議論
竹田恒泰氏「沖縄の基地負担が大きいというのは幻想だ」津田大介氏、森本敏氏らと沖縄問題を議論
 今月30日に投開票されることになった沖縄県知事選挙。米軍普天間飛行場の辺野古移設について推進派の佐喜真淳氏が是非を明確にしていない中、選挙の争点としては経済問題も重要なファクターとなりそうだ。3日放
AbemaTIMES
「辺野古移設には反対だが、話しづらい」「あえて経済を選んだ」沖縄の若者たちの本音とは?
「辺野古移設には反対だが、話しづらい」「あえて経済を選んだ」沖縄の若者たちの本音とは?
 沖縄県知事選を控え、民意の行方に注目が集まった今年2月の名護市長選挙。琉球新報が実施した出口調査によれば、普天間基地の辺野古移設について「反対」「どちらかといえば反対」が60%以上と、反対の立場を取
AbemaTIMES
「ジャーナリストはアクティビストじゃない」沖縄県知事選挙を前に、堀潤が思うこと
「ジャーナリストはアクティビストじゃない」沖縄県知事選挙を前に、堀潤が思うこと
 翁長知事の死去に伴い、今月30日に投開票されることになった沖縄県知事選挙。大きな争点は、在日米軍の普天間基地移設問題、そして沖縄の経済振興策だ。この二つの問題の間で揺れ続ける人々を取材してきた8bi
AbemaTIMES
この記事の画像一覧

■Pick Up
キー局全落ち!“下剋上“西澤由夏アナの「意外すぎる人生」
「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
「ABEMA NEWSチャンネル」知られざる番組制作の舞台裏

この記事の写真をみる(13枚)