選ばれし21人の中で、断トツのキャリアを誇る大ベテランが、決意を持って戦いの場に臨み続けている。麻雀プロリーグ「Mリーグ」で2000人以上のプロから選ばれた1人、KONAMI麻雀格闘倶楽部・前原雄大(連盟)は、7歳で麻雀を覚え、現在62歳。実に55年もの間、麻雀牌に触れ続けている。昨年10月、華々しく開幕した新リーグの中で、百戦錬磨の力をここぞという場面で発揮し、その存在感は際立っている。そんな前原だが「最初に卒業するのは僕」と、初年度から引き際も意識しながら戦っている。麻雀ニュース番組「熱闘!Mリーグ」では、そんな前原の覚悟を聞いた。
日本最大のプロ団体「日本プロ麻雀連盟」の1期生として、20歳でプロデビューをした前原。麻雀を愛し、買い集めた専門誌の数、実の3000冊以上。研究熱心ながら、Mリーグでは「陽気なおじいちゃん」という一面を見せている。それでも若いころは血気盛んな男だった。自ら「本当にとんがった生き方をしていましたね。ナメられるのも嫌だし、笑われるのも嫌。(新宿)歌舞伎町を歩いていると、混み合っている道がさーっと。歩くモーゼ(笑)」。その迫力から、人混みの中に一本の道ができたという。
そんな前原の生き方を大きく変えたのが、直木賞作家・伊集院静のひとことだ。「男はナメられて一人前だと言われました」。男気が溢れ、しかも誰からも愛される伊集院からの言葉が、前原の胸に深く突き刺さったという。後輩である佐々木寿人(連盟)、高宮まり(連盟)と同じチームで戦い、もちろん大先輩として精神的な支柱となりながら、時としてはムードメーカーとしての役割も果たす。そんな前原だが「(Mリーグを)最初に卒業するのは僕だと思っています」と覚悟を持っている。
40代が中心のMリーグにあって、55歳のセガサミーフェニックス・近藤誠一(最高位戦)より7歳上の62歳。「残された時間、卒業までの時間、それまでに何ができるかっていうのを考え続けるのが、最年長の役目かなと思っています」。ただ戦うだけでなく、何を残せるのか。もちろん最高の結果を目指しながら、前原は違うものも目指している。
数え切れないほどの対局をこなしてきた前原にとって、何よりの癒しが孫との時間だ。「癒される時間は大事だよね。そうじゃないと麻雀ばっかりになっちゃうから」。Mリーグの戦いにおいても、試合直前に送られている応援動画を見て笑みを浮かべ、そして気持ちを奮い立たせる。若き日々は自分のために麻雀を打ってきた前原が、今では孫やファンのために打つ。だから強い。「Mリーグっていうのは何十年も続いていくんでしょう。その時に『老人もいたな』って思われればいいかな」。“Mリーグ元年”を支えた21人の中で、前原雄大の名前は、間違いなく大きく力強い存在として語り継がれる。
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