25日放送のAbemaTV『AbemaPrime』で番組レギュラーを卒業したウーマンラッシュアワーの村本大輔が、「マイノリティが社会で果たす役割」をテーマに、作家の乙武洋匡氏と対談を行った。「乙武さんは一体何者なんですか?」という村本の問いかけに、乙武氏が「ただの障害者」と答えるところから会話はスタートした。
乙武:何が言いたいかというと、21年前に『五体不満足』という本が出て、やっぱり特別な障害者みたいな扱われ方をしてしまったし、僕が何かを言うと「乙武が言っているんだから、障害者はみんなそう考えているんだろう」と、"障害者の代表"のような捉えられ方をされるようになってしまった。何百万という障害者の中の、あくまで僕という個人の意見だということをしつこく言ってきたけど、それでもやはり私の発言がメディアに出ると、どうしてもそれが障害者の代表と捉えられてきた。このへんが20年抱え続けてきたジレンマ。特別な障害者でもなく、一人の手足のない車椅子に乗った42歳だということ。
村本:強者と弱者という言い方は好きではないが、あえて語るとなら、僕には乙武さんがものすごく強者に見えることがある。説明が難しいが、障害者に見えたことがないというか。
乙武:おっしゃることはすごく分かる。僕もこの21年、障害者の方にも健常者の方にも言われ続けてきたことの一つに「乙武さんは障害者ではない」という言葉がある。僕としては手足なく生まれてきて障害者じゃないって、じゃあ一体誰が障害者なんだと思うけど。でも、かわいそうな人であり、守ってあげなければいけない弱い立場の人たちだという、これまでの障害者のイメージとずれがあるということは分かる。確かに私はそういうタイプの人間ではないし、R-1で優勝した濱田祐太郎さんのように、別に守ってあげなくてもやってけんじゃないの?って思われる人間も出てきた。皆さんの中の凝り固まった障害者像がグラグラ揺れるというのが、私の果たしてきた役割の一つなのかなと思う。
村本:乙武さんは白黒はっきり言う方だと思った。沖縄の基地問題について「個人としては考えたいけども、政治家の立場からすると基地はあっても仕方ない」という発言をされた。僕は沖縄の人たちは弱者だと思う時がある。そういう時に"政治家の立場"という言葉が乙武さんから出てきたので、そっちが乙武さんの立場なのかなと思った。
乙武:辺野古の議論をした時に、村本さんから「これまで障害者やLBGTなど、常にマイノリティに寄り添ってきた乙武さんが、なぜ沖縄に関しては辺野古の人々に寄り添わないのか」という質問をいただいた。ずっと自分の中で問い続けてきて、最近答えが見えてきた。昔の僕だったら、村本さんと同じような視点でものを見て、もっと辺野古の方々に寄り添った視点で語ったと思う。でも僕は一時期から政治家を志したことがあって、視点が変わってくる部分があった。常にどんな時でもマイノリティの視点に立つ立場と、国民全体の利益を考えた時に、どのあたりが妥協点なのか考える立場と。政治というのは、色々な人の意見のぶつかり合いの中で落とし所を決めていく作業。自分はそれをやりたいんだと思った時に、一方だけに視点を置くのは自分の目を曇らせてしまうなと考えるようになった。村本さんが指摘してくださった、障害者やLGBTの問題と、辺野古や原発の問題のどこに違いがあるのかというと、相反する利益の人がいるかどうかだと思う。例えば辺野古の問題や原発の問題では、現場の方々に反対だという方々もいるが、賛成だと言う方々もいて、お互いの利益がぶつかっている。でも同性婚や夫婦別姓の問題は、誰の利益もぶつかり合わないはずなのに、認められていない。これは明らかにおかしいと思う。私は誰も損しないはずなのに、なぜか認められない問題に力を尽くしていきたい。
村本:これから何を目指されるんですか?10年後は?
乙武:昔は色々考えていたこともあったけど、3年前に一度"社会的な死"を迎えて、プランって立ててもうまくいかないなと思った。本当に、今、自分にやらせていただける目の前のことをひとつひとつ丁寧に全力で取り組むことで見えてくるのかなと思う。
村本:世界を旅するのは、どういう理由で?
乙武:もともと好奇心が旺盛だから。会ったことない人に会いたいし、食べたことないものを食べたいし、行ったことのないところに行ってみたい。日本の常識は世界の非常識で、世界の常識は日本の非常識。日本の凝り固まった常識から離れたところからの視点を養うためという理由もある。
村本:日本は幸福度ランキングで最低だったが、どう思う?
乙武:発表された順位よりももっと低いかなと思う。同調圧力が強くて、みんながこうじゃなきゃいけないという空気が強いので、そこから外れてしまう人が「こんな自分いていいのかな」と感じてしまう。それがこの国の問題かなと思う。
村本:僕も"弱者に寄り添う"というのは違うかもしれないが、自分が無視されている時って辛いし、声が届かない時は辛い。僕はこういう仕事をしているので、これからもその人達の拡声器になっていきたい。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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