ウェブデザイナーの男性が、他人のパソコンを使って仮想通貨を獲得するプログラム「コインハイブ」を無断でサイトに設置したとしてコンピューター・ウイルス罪に問われた裁判で、横浜地裁は無罪判決を言い渡した。
コインハイブとは、自身のウェブサイトを閲覧した人のパソコンを無断で利用し、仮想通貨をマイニングさせるプログラム。他人のパソコンを利用したマイニングをめぐっては、去年1年間で全国で21人が摘発され、去年7月には仙台地裁で有罪判決が言い渡されたケースもあった。
AbemaTV『けやきヒルズ』では去年6月、今回無罪判決が言い渡された男性を取材。男性は「新しい技術があったらとりあえず技術者として試してみたい」と、コインハイブがリリースされてすぐに自身が運営するサイトで導入した。すると、突然警察から電話があり、容疑も明確にされないまま家宅捜索され、取り調べを受けたという。
その後、「閲覧者に無断で行われる行為が社会的な合意を受けているとはいえない」と、いわゆるコンピューター・ウイルス罪で罰金10万円の略式命令を受けた。これに対し男性は「広告じゃない新しい収益化の形もたくさん出てくると思いますし、そこに水を差す形にはしたくない。法律的にどこが良くてどこがいけないのか明確なラインを知りたい。今後業界が萎縮してしまわないように、明確な基準を判例として残せれば」と、略式命令を不服とし正式裁判で争っていた。
今回の最大の争点は、コインハイブが“不正な指令”になりコンピューター・ウイルスに当たるかどうか。今日の判決で横浜地裁は「ウェブサイトの収益方法として広告などの様々な方法があり、マスメディアや警察の違法性の警告がない中で、刑事責任を取らせるのは行き過ぎで、犯罪の証明がない」と指摘し、無罪を言い渡した。
判決を受け男性は「ひとまず一安心という気持ちです。裁判に至るまでのフロー自体がすごく問題だと思うので、今回の件だけでなく今後のそういった事態にも目を向けていけたらなと思います」と話している。
判決でも指摘された「意図に反する動作」の問題について、東京工業大学准教授の西田亮介氏は「ホームページの収益性をあげるためのCookieという仕組みがあるが、こうした必ずしも閲覧者の同意を得ない仕組みがあること」と指摘。また、刑事罰がイノベーションに与える影響について「今回は悪質性の低さもあって有罪には至らなかったが、有罪が出たケースもある、個別性のある案件」としたうえで、「どの程度パソコンに負荷をかけていいのか、現行の法律では示せていない部分があるので、ある種の指針が示せるとビジネスと利用者の間に適切な規律が生まれてくると思う」との見方を示した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)










