RTDリーグ初代王者が、新生「RTDトーナメント」で屈辱の入れ替え戦から挑戦を目指す。Mリーグ・渋谷ABEMASでも活躍する多井隆晴(RMU)は、同トーナメントの前身にあたるRTDリーグで、並み居る強豪を抑えて優勝を果たした。以前より麻雀界では知られた存在ながら、改めて「最速最強」の名を轟かせたことで、多井にとっては第2の麻雀プロ人生を歩むきっかけにもなった。「RTDには感謝と恩返しをしたいんです。僕のいないRTDなんて存在しないし、考えられない」と豪語する男が、新大会でもいきなり暴れまくる。
2016年4月。インターネットテレビ局「AbemaTV」が開局となり、当初からあった「麻雀チャンネル」の独自企画として、トッププロを集めたのがRTDリーグ。多くの麻雀ファンが注目をした大会で優勝したことで、多井を取り巻く環境が劇的に変わった。昨年10月にスタートしたプロ麻雀リーグ「Mリーグ」においても、この優勝がなければ、ドラフトの指名が大きく変わっていたかもしれない。RTDリーグ3年目となった昨年、予選リーグで7位に終わったことで、歴代優勝者がまさかの入れ替え戦。「かなりショックだった」が、時が経つごとに「今となっては、ちょっとおいしいかな」と思い始めた。
なぜ本戦出場ではなく、入れ替え戦が「おいしい」のか。「RTDトーナメントと名称も変わったし、その初陣を飾れる形になりましたから。(負けたら)本戦に出られない、ということよりも、一番出番が多い役だと思うようになりました。ここから優勝した方が、価値がある」と、頭の中では既に大逆転ストーリーが書き上がっている。
3月で47歳になった。年齢だけで見れば、レジェンド級の先輩も多く現役で活躍しているが、プロ歴なら24年目。「Mリーグでも、歴なら上から2番目ですからね」と、代表を務めるRMUはもちろん、2000人以上いると言われるプロ雀士の上に立ち、目標とされる存在でもある。今回、入れ替え戦で相対する仲田加南(連盟)においては、仲田がプロ試験を受けた際、試験官を務めたという間柄だ。「指導する側だったので、感慨深いですよ。彼女の活躍は見ていましたし、強いなと思っていました。一番マークしていますよ。怖いですよ、あのラリアート(笑)」と、冗談も交えながら所属団体の女流タイトルを3連覇中の後輩の力を、そのまま認めた。
とはいえ、まだまだ道を譲るつもりもない。「私は解説を日本一こなしてきた、日本一プロの対局を見てきた自負があります。昭和だろうが平成だろうが新元号だろうが、なんでも対応してみせますよ」と、大きな壁として立ちはだかる。
時代が移り行く中で、プロ雀士が求める麻雀像も変わってきた。その生き様や打ち筋に浪漫を見た昭和、ネット麻雀の普及により加速度的にデータ主義が進んだ平成。「結局、大衆が何を求めているか、何で心を揺さぶられるか。味気ない勝負論だけしていても、人の感情は揺さぶれないし、愛されるプロにもなれない。ファンにどれだけ愛されるかですよ」と、単に勝つだけでなく、ファンの共感を呼ぶ勝ち方を目指す。これが多井のプロ像というものを、卓上で表現する日はもう間もなくだ。
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