持ち時間5分、1手につき5秒が加算される超早指し戦「第2回AbemaTVトーナメント」の予選Bブロックの三番勝負が5月12日に放送され、糸谷哲郎八段(30)が佐々木大地五段(23)をフルセットの末2-1で下し、一位決定戦へと進出した。一位決定戦では、都成竜馬五段(29)と対戦する。
自身開幕戦から「糸谷ワールド」全開だ。昨年度最多勝の新鋭・佐々木五段相手に、第1局を攻め立てながら174手で落としたが、これでようやくエンジンがかかった。2局目も佐々木五段にリードを許したかと思われたが、解説を務めた山崎隆之八段(38)が「糸谷さんが妖術をかけたよう。勝ちのなさそうなところからあっという間に逆転した」と、対戦相手どころか周囲の人々まで惑わす指し回しで122手で勝利した。
こうなればもはや糸谷ワールドから抜け出す術はない。決定局となった3局目、またしても佐々木五段が優勢かと思われたが、気付いたころには糸谷八段ペース。186手で勝利をもぎ取り、一位決定戦へと進出した。
対局後には、敗れた1局目を振り返りながら「フィッシャールールの怖さを知りましたね。時間的にはある程度残していたはずなんですけど、全然寄せが見えなくて…」と反省材料を見つけた。続く一位決定戦は、同世代の都成五段との対決。勝てば本戦が決まる。「昔からよく当たってきた方ですので、負けられないです」と目を光らせた。苦しむほどに強くなる。対戦相手にとって、これほど脅威な棋士はいない。
敗れた佐々木五段のコメント やはり糸谷八段強かったな、という率直な気持ちですね。少しリードを奪えたかなと思った局面でも、ちょっと急所を見えづらくされたところで、こちらも対応を誤ってしまって、終盤もところどころチャンスがあるかなと思ったんですけど、やはりものにできず力の差を感じましたね。
◆AbemaTVトーナメント 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治九段の着想から生まれた、独自のルールで行われる超早指しによるトーナメント戦。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生九段が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選A~Cブロック(各4人)は、三番勝負を2回制した棋士2人が、本戦への出場権を手にする。本戦トーナメントは8人で行われ、前回優勝者の藤井聡太七段、タイトルホルダーとして渡辺明二冠がシードとなっている。
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