15日、未来投資会議で安倍総理は「元気で意欲のある高齢者に経験や知恵を社会で発揮してもらえるように、70歳までの就業機会の確保に向けた法改正を目指す」と、高齢者の就業拡大に向けた方針を示した。
具体的には、定年の廃止や70歳までの定年延長、再就職や企業の支援などを、会社側が努力義務として取り組まなければならなくなる。政府は今後検討を進め、来年の通常国会に法案を提出する考えだ。
一方、「終身雇用」の見直しに関して、経済界の発言が注目されている。経団連の中西宏明会長は7日、「制度疲労を起こしている。終身雇用を前提にすることが限界。経営者は雇用維持のために事業を残すべきではない」と言及。トヨタ自動車の豊田章男社長は13日、日本自動車工業会の会長としての会見で「雇用を続ける企業などへのインセンティブがもう少し出てこないと、終身雇用を守っていくのは難しい局面に入ってきた。労働流動性の面はまだまだ不利だが、派遣や中途入社など以前よりは会社を選ぶ選択の幅が広がった」との見解を示した。
経済界からはなぜこのような声があがるのか。東京工業大学准教授の西田亮介氏は「終身雇用=長期安定雇用というのは、ある種の建前のようなもの。非正規雇用で働く人が4割という現代で、形式的な側面があるのがひとつ。もうひとつは、日本は労働契約法によって解雇が厳しく制限されていること。『整理解雇の4要件』と言われる条件を満たさないと、企業は人員を解雇できない。それが企業の競争力を削いでいるのではないかということで、経済界は90年代から解雇規制を緩めてほしいと主張してきた」と説明する。
日本では人手不足が問題視され、安倍総理も「一億総活躍社会」を掲げているが、「終身雇用は限界」という経済界の主張は矛盾しないのか。西田氏は、トヨタの売上高が初めて30兆円を超えたことに触れ「国内での売り上げは下がっていて、じゃあどこが売り上げているかというと海外。例えば国内市場が縮小して生産台数が減っていった時に、工場の労働者全員が働き続けるのは難しいことではないか、というメッセージを出している」と指摘。
また自動車メーカーは、ライバルにIT企業が立ち上がってきている“転換期”を迎えているとし、「そうして費用を抑えた分は、電気自動車や自動運転などの新しい事業に投資したい。工場などを持っていないIT企業は設備投資が少なく、新規の研究開発に多くの投資ができる。自動車メーカーは、GAFAと言われるようなIT企業と戦えるように投資をできるようにしておきたいということだと思う」と述べた。
では、日本は終身雇用廃止へと向かうのか。西田氏は「一般的に高齢になると、新しいことを学んだり柔軟に職場を変えたりするのは難しくなり、企業都合による解雇は増えると思う」としたうえで、「何かとグローバルスタンダードに合わせようという議論が盛んだが、それに合わせて生活が悪化してはどうしようもない。今の日本のいいところは残して、良くないところはグローバルスタンダードに近づけていくということを、どのように実施するかを考えるべき。国際的にみると日本は人材の競争力があまりないので、他の国の人たちと一緒に何かできないか、共存できる方法はないかなど、別のアプローチを考えるべき」だとした。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
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