「北方領土を戦争で取り返す」という趣旨の発言で14日、日本維新の会から除名処分となった丸山穂高衆議院議員。同日夕方、丸山議員はTwitterで「無所属で活動する」と議員辞職をしない考えを示したが、厳しい批判の声が相次いでいる。
このニュースについて、15日放送のAbemaTV『けやきヒルズ』で「ミスをしない人間はいないが、今回は失言を越えていた」と意見を述べた、慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏。その意図について、放送後さらに話を聞いた。
「酔った勢いだとしてもまずい失言だと思うが、気になったのは、周りの人がなだめたり注意したりしても言動が変わらなかったらしいということ。壇上で一方的に話している時や演説の中でうっかり出るひと言は、人間は完璧ではないと思っているのであると思う。しかし、注意を受けてもその『態度』が直らず横柄だったのは、丸山議員が“裸の王様”になっていたのかなと。東大出身の元官僚で、35歳で衆議院3期目。エリート中のエリートで、これだけの経歴ともなるとよほど自分に厳しく生きないとおごりが出てくるものだと思う。もう少し緊張感があって、注意された時に『今のは言い過ぎてしまいました』などとすぐに態度を改めていたら、現場にいた人もここまで問題にしなかったのでは。失言ひとつを取ったのではなく、苦労してきた人たちに対する配慮が足りなかったり、負の感情を与えてしまう一連の態度が問題だったんじゃないかと思う」
丸山議員の失言は“1アウト目”ではなかったとする若新氏。これを受けてテレビ朝日の大木優紀アナウンサーは「発言の相手は89歳の訪問団長で、戦争を経験するなど人生経験も豊富な方。そういった方からいろいろなことを教えていただくという態度であるならば、発言や会話の内容をみるとどこか横柄な部分があったのかなと。そこの信頼関係は崩れていたように思う」と意見を述べる。
また、若新氏は信頼関係の構築する途中での勘違いや思い込みは誰でもあるとし、「酔っ払った時に多少がさつになっても、ふだん一生懸命やってくれているから許せる、という現場は山ほどある。約束を完璧に守る、絶対にミスをしないのではなく、注意を素直に受け入れられるか、謝るべき時に謝ることができるかといったところで信頼関係は作られるものだと思う。政治家がつくるべきは、完璧な姿ではなく、支援者や問題の当事者に『粗いところはあるけど言ったことは聞いてくれる』『話はきちんと聞いてくれる』と思ってもらえる信頼関係で、丸山議員はそれができていない政治家だったのでは」と指摘。ミスや不完全さを素直に認められる人ほど、信頼されやすい。そうした話を市役所の職員や学校の先生に伝えると、「それは盲点だった」と話す人も多いという。
そんな中、『けやきヒルズ』は自民党が配布しているという「失言マニュアル」を入手することができた。その中には、「“失言”や“誤解”を防ぐには」として、「発言は『切り取られる』ことを意識する」「報道内容を決めるのは目の前の記者ではない」「タイトルに使われやすい『強めのワード』に注意」などと書かれている。強めのワードの中には、今回丸山議員が発言した「歴史認識や政治信条に関する個人的見解」もあげられている。
このマニュアルに若新氏は「どんなに立派な立場の人でもミスすることはある。踏み込んだ政策をこれから扱わないといけない中で、ミスを全く許さない社会をつくる風潮になったら、何も語れなくなる。失言をしないに越したことはないが、何か発言をしてしまった時にダラダラと反論するのではなく、冷静に頭を下げられる、丁寧に訂正するということを認め合える社会になるべきだと思う。ミスを防ぐより、ミスをした時にどうするかということの方が今求められていることなのではないか」と持論を展開。
大木アナも「『歴史認識と政治信条は長引くから注意』とあるが、国の根幹をつくる政治家にはポリシーを持っていてほしい部分でもある。それをマニュアルに書いてしまうと、若新さんが言う通り余計なことは避けようと何も言わなくなる。ある程度踏み込んだ発言をしてそれが問題になった時に、その意味をきちんと説明できる、周りを納得させられるくらいの政治家のほうが、メッセージになると思う」とした。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
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