川崎市多摩区のJR登戸駅の近くで小学生の児童ら19人が刺された事件で、小学6年生の栗林華子さん(11)と小山智史さん(39)が死亡。身柄を確保された50代の男も自身の首を刺し、搬送先の病院で死亡が確認された。
被害に遭ったのは、私立カリタス小学校に通う小学生ら19人。スクールバスを待っていたところを襲われ、男が「ぶっ殺してやる」と叫んでいたという目撃情報もあるという。男の狙いは子どもだったのか。臨床心理士で明星大学准教授の藤井靖氏に見解を聞いた。
「事件現場の近くには登戸駅があって、無差別に『誰でもいい』ということであれば、繁華街や歩行者天国など明らかに人が多いところに向かうのが自然。ただ今回はそうではなく、子どもが狙われたという印象。子どもを狙ったとしたら、毎日集団登校でスクールバスに乗り込む声がうるさいなどといった直接的な理由か、もしくは容疑者のこれまでの人生の中で子どもに対して何らかのトラウマやマイナスの体験があるなどの間接的な理由が考えられると思う」
子どもが狙われた可能性はあると話す藤井氏。男が事件を起こした背景としては4点を推測する。
「1つ目は恨み・怒りといった感情や思いを、自己主張やメッセージのような形で示す場合。2つ目は拡大自殺で、自分が死のうと思っていて誰かを巻き添えにするというもの。3つ目は異常な性癖で、血を見ることに興奮をおぼえたり、子どもが苦しんでいる姿や表情を見ることで快感を得ようとするタイプ。4つ目は何らかの精神疾患や障害,依存症に起因して、幻覚や妄想にとらわれた状態で行動してしまう場合。大きくはこの4つが考えられる」
男は犯行後すぐに自殺を図っているが、犯行は計画的なものだと考えられるのか。藤井氏はその可能性が高いとし、「一定程度の責任能力はあったことが推測される。もし責任能力がないとすれば、自分がやったことへの罪の意識や、どれだけ大変なことをしてしまったのかという自覚ができず、犯行直後に呆然と立っていたり,あるいは平然としている可能性がある。殺傷能力が高く刃渡りの長い刃物を複数用意していた状況からも、計画性はあったと思うし、自殺を図るところまでが計画内であったと推測できる」と指摘。男の「ぶっ殺してやる」という叫びに対しては「犯行の予定はしていたとしても、心理的なためらいは多くの場合ある。いざ行動に移すとなった時に、自分で声を出して、犯行のきっかけを作ったのではないか」と推測した。
また被害の状況について、「命の危機につながる場面に直面した場合、大人であれば容疑者と戦う(抵抗する)か、もしくは逃げる、という2択になることが多い。一方で、被害にあった6、7歳の子どもたちの中には、すぐには状況が理解できずその場で固まって立ちつくしてしまい、逃げ遅れた児童がいたかもしれず、それが多くの子どもが傷つけられたことにつながった可能性がある」とした。
子どもの安全を守るスクールバスを待っている間に起こってしまった事件。藤井氏によると、2001年に大阪で起きた池田小事件以降、学校のセキュリティは厳しくなっているという。しかし、それだけでは守りきれない面があるとし「集団登校やスクールバスのような形があるとはいえ、家を出て今回のようにバス停で待っている間は無防備で,犯罪者からすると狙いどころともいえる。ボランティアの方が道路に立ったり、PTAの方が見回りをしたりということはあるが、危険な時間や場所はまだまだあるということ」と懸念を示した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)







