持ち時間5分、1手につき5秒が加算される将棋の超早指し戦「第2回AbemaTVトーナメント」予選Cブロックの二位決定戦(三番勝負)が6月2日に放送され、増田康宏六段(21)が八代弥七段(25)を2-1で下し本戦トーナメント出場を決めた。次世代を担う若手実力者の対決は、「東の天才」とも呼ばれた増田六段に、軍配が上がった。
いつも以上に増田六段の顔から、笑みが溢れ出た。全棋士参加の早指し棋戦で優勝歴もある強敵相手に、フルセットの末、2-1で勝利。「とてもうれしいです。本当によかったです」と喜びを隠さなかった。一位決定トーナメントの1回戦で、木村一基九段に0-2で敗れた時には、本調子にはほど遠い自分に戸惑ったが、戦いを重ねて完全に自分を取り戻した。
1局目を落としても慌てなかった。先手番だった2局目はあまり前例のない序盤ながら、踏み込みの鋭さが光り77手で勝利。タイに戻した。勝てば本戦、負ければ敗退の3局目。気合が乗った増田六段の踏み込みがさらに冴えた。「最初から最後まで理想通りの展開」と自画自賛すると、解説を務めた三浦弘行九段も「本局は増田六段の素晴らしさを称えるしかない。会心譜。自身を持って、勝ちを確信しながら指していた」と賛辞を並べた。
大会前、目標を聞かれ「藤井七段に勝つ!」と答えた増田六段。改めて本戦で対戦したい棋士を聞かれると、順位戦でB級2組昇級で先を越された近藤誠也六段、そして藤井七段の名を挙げた。世代交代の流れが強まる将棋界において、次の時代は自分が中心となる。そんな出世レースは、このAbemaTVトーナメントでもさらに激化する。
敗れた八代七段のコメント あまり公式戦でも番勝負は経験したことがなかったので、結構おもしろいもの。フルセットみたいな気持ちってなかなかないと思うので、今後に活かしていければなと思っています。
◆AbemaTVトーナメント 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治九段の着想から生まれた、独自のルールで行われる超早指しによるトーナメント戦。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生九段が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選A~Cブロック(各4人)は、三番勝負を2回制した棋士2人が、本戦への出場権を手にする。本戦トーナメントは8人で行われ、前回優勝者の藤井聡太七段、タイトルホルダーとして渡辺明二冠がシードとなっている。
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