「老後に2000万円が不足する」とした金融庁の報告書について、報告書として受け取らない考えを明らかにした麻生財務大臣。一方で、金融庁も報告書を了承する金融審議会の総会に提出しない方針を固め、国民に不安が広がっている。
この“老後2000万円問題”について、12日放送のAbemaTV『けやきヒルズ』で「これからは人生をマラソンではなくジョギングと考えるべき」と指摘した、慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏。その考えについて、放送後さらに話を聞いた。
“100年安心”がうたわれていた年金の土台が緩んでいることに、「人生100年時代になって、国は“そりゃ定年も遅くなりますよね”とか“もっと働けますよね”といったいろいろなメッセージで、年金が60歳からずっとはもらえないだろうということは伝えていたと思う」と述べる若新氏。一方で、その計算方法は適正ではないとし「今回の計算は、引退してから30年ぐらいある老後という期間を、今まで通りの支出で計算したらこれだけ収入が足りないという話。しかし、サラリーマン世代の収入は20年前と比べると減っていて、みんな収入が減ったら減ったなりの支出を考える。インフラも整備されて社会環境が変わっている中で、シニアの人だけを支出が同じまま計算するのは違和感がある」と指摘する。
また、高齢化によって人口構造が変化する中で「“現役と老後”というシステムに限界があると思う」とも主張。「ウチの父親は60歳で定年退職し、退職金もいっぱいもらった。今は年金で悠々自適。でもそれは、マラソンでゴールテープに向かって全力で走りきったような状態で、老後の幸せを“人質”に取られていたように感じた。60歳でゴールテープを切って、退職金3000万と年金を月20万円もらえたら、それは生きていける。だから、そのためなら現役時代はできるだけ休まずひたすら全力で走る。ただ、これは従来の社会の前提で計算されたもので、その前提が変わってきた今は無理だと思う」とした。
では、これからの“人生100年時代”をどう生きていくべきなのか。若新氏は「辛くても短く走りきって安泰を最後に楽しむのではなくて、ジョギングのように長く楽しみながら働けるように考えていかないといけない。42.195kmをゴール前で50kmまで走れと言われても、同じペースで走れるわけがない。そのかわりペースを下げていいし、給水もしていい。自分で納得して、長く働けるようにしようというキャリア観を根底から変えていくべきだと思う」との考えを示した。
若新氏の主張を受けて、2児の母であるテレビ朝日の大木優紀アナウンサーは「子どもが一番可愛くて親と遊んでくれるのは10歳ぐらいまでだと思っていて。この一番大切にしたい10年をマラソンだと思って無理してしまうよりは、時短制度を使うなりして子どもとの時間にあてるのはいいことだと思う。以前、5歳の娘が『お父さんお母さんとはお家で遊びません。お仕事が忙しいです』と先生に言っていたと聞いて、その切ない言葉で時間の使い方を考えないと思った」と自身の状況を踏まえコメント。若新氏はその意見に賛同し、「少し前までは、現役時代は走り続けないと損する人生だと思われてきた。今はその会社では出世できなくとも、経験を生かして違う場所で新しい働き方や自分なりのライフワークを模索することができる」と話す。
一方で、大木アナは実際に10年休むことは難しいとし、「今の日本では10年のブランクを空けた先の再就職はすごく厳しい。何か積み重ねることがよしとされて、特に女性は積み重ねることでしか仕事を続けられない世の中になってしまっている。雇用の流動性とか言われるけど、日本はもう少し転職とか再就職を受け入れてくれる土壌が欲しい」と意見を述べていた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
▶︎【映像】若新雄純氏が考える“老後2000万円不足”問題
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