2016年1月から昨年4月までの間に7万冊以上の漫画を無料で公開していた海賊版サイト『漫画村』。その運営者の1人、星野ロミ容疑者が7日、フィリピン・マニラの空港で入国管理局によって拘束された。福岡県警などが著作権法違反の疑いで去年5月から行方を追っていたという。
今後、日本に強制送還されるという星野容疑者だが、管理者は他にも複数いたと見られている。彼らは一体どんなグループなのか。その全容は解明されるのだろうか。漫画家たちの代理人としてこの問題に取り組み、米Cloudflareのサーバのログデータから運営者情報を特定したこともある中島博之弁護士に話を聞いた。
まず、星野容疑者について中島弁護士は「以前は『やらおん!』という、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)への書き込みを集めた"まとめサイト"の管理者として有名な方だった。他人の投稿物や著作物を借りてきて自身のサイトに掲載するという意味では、漫画村と同じことをしてきた。星野容疑者が運営している会社のドメインを持ったメールアドレスが漫画村のサーバーのログインIDになっていたので、主導的な立場で運営に関わっていたことは間違いないのではないか」と話す。
「名前を言ってしまうと皆さんが閲覧してしまうので言わないが、『漫画村』と作りの大変よく似たクローンサイトもある。明日以降、更新があるかないかを見れば、これにも星野容疑者が関わっていたかどうかがわかると思う著作権制度に対して非常に挑戦的で、著作権が保護されていない国で運営しているので、日本の著作権侵害にはあたらないと堂々と主張していた。ただ、日本は著作権の相互保障の協定があるアメリカ企業のサーバー上に著作物のキャッシュという、いわばコピーができていたので、その主張は意味がなかったのではないか」と話す。
その一方、中島弁護士は「これだけの数のデータをアップロードするというのは、星野容疑者だけではできなかったと思う」とも指摘する。「今後、押収したパソコンの分析などからグループの全容がどれだけ解明されるのかが焦点になってくると思うが、逮捕令状が取れているということは、捜査当局の中ではそれなりに証拠が固まっているのだろう。主犯格の名前も具体的に上がっていると聞いているので、そちらの捜査もある程度は進んでいるだろうし、警察当局はある程度全体像を把握していると思う。"芋づる式"に、ということも見通しとしてはあり得る。海外に逃亡したとしても逮捕できることを示したことによって、サイト運営者を逮捕することによって元を根絶し、一つ一つ潰していくという新しい展開が見えてくると思う」。
■違法サイトは「漫画村」以外にも…「日本でも"インフリンギング・ウェブサイト"の取り組みを」
今回の拘束を受けて、漫画家たちからは安堵の声も聞かれた。成田成哲さんは「行動を起こしてくれた色んな方々に感謝。これで被害に遭った作家さん達が少しでも報われてくれると良いですね」とツイート、漫画家の赤松健さんは、取材に対し「この事件で"海賊版を読むことは悪いことなんだ"という常識が広がり、"海賊版サイトの運営者はいずれ捕まるんだ"という結末につながったことも良かった」、漫画家の山田貴敏さんは「紙媒体は窮地に立ち、電子書籍の作家が増えているが違法サイトがあると食えなくなる。著作権法違反で違法に得た収入が作者に支払われる法整備を望む」とコメントしている。
漫画家の江川達也さんも「今回は本当に朗報だ。こういう人が捕まって、それなりの刑事罰とか民事訴訟もあったりして、破産とかひどいことになれば、真似する人が減る」と期待感を見せた。
ただ、視聴者からは「漫画村、便利だったのにな。漫画村なくなっても他のサイト使えばいいだけだしな」「推定被害額?無料じゃなきゃ読まない奴が読んでいるのに」「漫画が高すぎなんだよね。電子書籍も1話ずつ、何百円取られて、読み終えようとするには何万円もかかっちゃう」といった意見が番組に寄せられている。
無料で読めること、そして公式サイト以上ともいわれる利便性などから、漫画村の月間アクセス者数は昨年3月のデータで1億7000万人、それに伴うサイトの広告収入は5000万円~1億円程度に上っていたとも推定されている。さらには閲覧者のPCやスマホを使って無許可で仮想通貨のマイニングを行っていた可能性も指摘されていた。
中島弁護士は「メジャーな仮想通貨はマイニング競争が激し過ぎ、なかなか取得しにくいという面もあるので、どのくらいの利益を得ることができていたかはわからない。ただ、日本の広告会社を通じて広告が出稿されたというのは報じられている通りで、かなり多額のお金が動いていたと考えられる。これは広告の配信業者が自主的に規制を行わない限り、流れてしまうものだ」と説明。
また、政府は昨年、海賊版対策強化の観点から「サイトブロッキング」を検討したが、「表現の自由」の観点から強い反対があり、法制化には至っていない。漫画村以外にも海賊版サイトがあり、イタチごっこではないかとの意見については、「動画や音楽ストリーミングのような形でビューワーで閲覧することになるが、端末の一時記憶領域にキャッシュが入った場合、それは複製にならないという当局の見解が出ているので、見た方々に対して複製権侵害、著作権侵害を問うことは難しい。また、YouTube、Facebook、Twitterは電話番号を登録することによって本人確認をしているが、日本のプロバイダー責任制限法はアメリカの法律と違って電話番号を開示の対象にしていない。そういった法整備や諸々のことを行っていけば、国内で著作権侵害とも戦いやすくなる。また、イギリスのロンドン市警などは"インフリンギング・ウェブサイト(Infringing Website)"といって、違法なウェブサイトのリストを構築し、周知している。同様の活動は世界規模で広がりつつあるので、日本でも警察が同じようなサイトのリストを作り周知する展開もあり得ると思う」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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