「国に不満があるなら出て行けばいいんだ。この国が嫌いで不満があるなら出て行けばいい。いつも言っていることだ」
トランプ大統領が「アメリカから出て行け」と言ったのは、非白人系の民主党議員4人。そのうちの1人、子どもの時に内戦下のソマリアから難民として逃れてきたオマル下院議員に対しては、「1人は政府が失敗し、国家も失敗したソマリア出身だ」と発言した。
特定の国の出身者であったり、その子孫であることを理由に「国から出て行け」と言うのは、典型的なヘイトスピーチだ。15日、トランプ大統領から度重ねて「国から出て行け」と言われた女性議員4人が会見を開き、「私たちには無視され取り残されてきた人たちの声を代弁する義務がある」「大統領のようにイスラム嫌いや憎悪、偏見を持つ人たちは、私たちが身を守ろうと反応するのを楽しんでいる」と反論した。
トランプ大統領の発言が全米で物議を醸していることについて、慶応大学特任准教授などを務めるプロデューサーの若新雄純氏は次のような考えを述べる。
「トランプ大統領の発言そのものは明らかにヘイトスピーチ。だた、一連の流れを見て感じたのは、トランプ大統領の“汚い言葉”をきっかけにして、きちんと反論の会見が行われ、メッセージが発され、議論が深まっていっているということ。すごくセンシティブな問題なのに、タブー視せずに国をあげて取り扱っている感じがある。アメリカは日本と違って多人種・多宗教で、衝突やすれ違いが起きてしまう国だからこそ、起こった衝突と傷つきながらも向き合っている。日本の政治家なら一発アウトだし、反論に対する次の発言をする権利も与えられない」
日本でも多様性を表す「ダイバーシティ」は一般的になったが、若新氏は「論文を読むと、元々アメリカで生まれたものだと言われていて、境界をなくして一緒にするのではなく、背景の違う人たちが衝突することにきちんと向き合い、違いを活かし合うことだと。傷つきあいながらも、決してどちらかだけに同化させてしまわないというのがダイバーシティの歴史」と説明。
その上で、「日本での、このセンシティブな問題をタブー視する、触れないでおこうというのは違うと思う。僕が経営者だったとして、日本で働きたいと外国から来た人が職場の中で『日本人はなんてバカなんだ』とか言ったら、思わず感情的になって『それなら自分の国に帰ればいい』などと言ってしまうかもしれない。これはヘイトスピーチだが、差別主義者だとされるのが怖い、だから外国人を受け入れられないという方向ではなく、そう言ってしまう自分たちって何なんだろう、民族間でなぜ対立が起きるのかを考えながら、違いと向き合っていくことが本当の意味でグローバルだし、ダイバーシティだと思う」と意見した。
また、自身がいくつかの企業の経営に関わってきたことに触れ、「経営陣同士も一緒にやればやるほど意見が違ってくるが、そういった時は泣いて鼻水垂らして、朝方までぶつかり合うような時間を経るしか分かち合えない。それか、衝突するのをめんどくさがって、お互いに“切る”か。その点、トランプ大統領の発言は乱暴なヘイトスピーチだが、建前だけでは済まない問題についてガンガン本音を言ってかき混ぜることによって議論に巻き込み、実は人種を越えた理解とか共存という点で、アメリカは傷つきながらも進んでいると言えるのではないか」と述べた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
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