1年前の2018年8月7日。プロ麻雀リーグ「Mリーグ」の第1回ドラフト会議で、最初に名前を呼ばれたのは、知名度としては無名に近い園田賢(最高位戦)だった。初代Mリーガー21人のうち、唯一個人タイトルを持たない選手だったが、赤坂ドリブンズに入団後の活躍は目覚ましく、チームの初代王者に大きく貢献した。大企業のエリートサラリーマンとして働く2足のわらじ、しかもアプリまで自作できるほどの頭脳を持つ園田に、麻雀ニュース番組「熱闘!Mリーグ」が密着した。
園田は1980年、神戸市生まれ。高校は超名門・灘高校出身のエリートだ。大学進学後に麻雀に出会うと、在学中にプロテストに合格。プロ雀士としてのキャリアをスタートした。就職した先は、日本屈指の大企業。「任されているプロジェクトの数字とか予算とかを見ながら、全体的な戦略を考える」のが園田の役割だ。上司によれば「園田は特殊なスキルを持っている。非常に数字に強い人間です。僕のチームには数字に強い人間が多いが、園田はピカイチで強いので、代えがきかない人間だなと思っています」と高く評価されている。
赤坂ドリブンズのチームメイトからの信頼も厚い。鈴木たろう(協会)が「天才ですね。めちゃめちゃ頼りになる。こんな強いんだという気持ち。賢ちゃんがいるチームでよかったと本当に思っている」と絶賛すれば、村上淳(最高位戦)も「明るいし、頭がいいし、ムードメーカー。プラス麻雀が死ぬほど強い。こんなに力強い味方はいないですね」と続いた。
園田を知る人ほど、その能力を高く評価するが、なぜこれまで無名だったのか。ドラフト会議時も、本人は「ビックリしましたね、当然。同時に『園田、誰だ?』『ドラフト3位でも取れるじゃん』という心の声がめちゃめちゃ聞こえて、すごい気まずかったです」と苦笑いした。タイトルとも縁がなかった分、他のスター雀士よりメディア露出も少なかった。サラリーマンとプロ雀士という2足のわらじであったことも、露出機会を減らしていた。
そんな園田に麻雀と仕事、どちらか1つに絞るという選択はなかったかと質問すると「そんなの答えられない。どっちも100%大切ですよっていう感じですね」と答えた。勤務後はほぼ毎日、麻雀の練習を積む。短時間で効率よく練習できるのが、園田の強みでもある。「仕事をきっちりやる。それで時間を作る。作った時間で、質の高い練習をする方が、よりベターなのかなと感じています」と、限られた時間の中で自分を高める術を知っている。
密着した番組スタッフが自宅を訪れると、新たな発見があった。大きなディスプレイのあるパソコンがあり、それの用途を聞くと「アプリ作りだとかをするためのパソコン」と答えた。仕事、麻雀だけでなく、なんと独学でアプリを自作してしまうのだという。「簡単に言うと、(麻雀の)成績を集計するためのツールです。ルール別の成績が見られたり」。平均ポイント、順位などを簡単に計算できる戦績記録アプリを、麻雀をより楽しんでもらうために無料で公開しているというから驚きだ。
初代王者になった後、オフシーズンに開催されたチームのディナーショーでは、遠方からも多くのファンが集まった。景色が大きく変わったこの1年に「信じられないですよね。ファンサービスというより、僕らが勇気をもらいました。こんなおっさんたちを好きでいてくれて、ありがとうございます。(Mリーグには)夢しかないです」と、目を細めた。
9月30日から始まる2019シーズンは全8チーム、29人が戦うことになる。その中でも“1番目のMリーガー”園田の天才ぶりは、さらに輝きを増す。
※最高位戦=最高位戦日本プロ麻雀協会、協会=日本プロ麻雀協会
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