将棋界に巻き起こる大きな世代交代のうねりに対して、敢然と立ち向かう一人の中年棋士がいる。木村一基九段、46歳。受けの巧者として「千駄ヶ谷の受け師」の異名を持ち、解説でも絶妙なトークを展開することから、ファンも非常に多い。そんな木村九段が、今が全盛期とばかりに、自身初のタイトルを目指して大舞台で戦い続けている。
 木村九段が、なぜ今注目されるのか。現在の将棋界において、8つあるタイトルの保持者に、40代は1人もいない。二冠の豊島将之名人(王位、29)、棋王・王将・棋聖の渡辺明三冠(35)で5つを占め、残りの3つを広瀬章人竜王(32)、永瀬拓矢叡王(26)、斎藤慎太郎王座(26)が持つ。最年長タイトルホルダーが35歳の渡辺三冠と、一気に低年齢化した。