世界の潮流になっている「プラスチックNO」の動き。いま社会問題となっているのが海洋プラスチックゴミだ。世界では、年間約800万トンのプラスチックがゴミとして海に流れ込んでいると言われている。捨てられたプラスチックを海の生き物がエサと間違って食べてしまい、生態系への影響が問題視され、さらにはその魚を食べる人間の健康被害につながるのではという懸念もある。
プラスチックを使ってはいけない理由について渋谷の若者に聞いてみると、「元の原料がなくなっちゃうから?自然にも良くない?」「処分できないから?」と、なんとなく良くないと思っている人も多いようだ。
そうした中、タピオカブームによりプラスチックストローの需要が伸びているのが、ストロー国内シェア1位のシバセ工業。8日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、シバセ工業の磯田拓也社長と地球環境戦略研究機関の吉田哲郎氏を招き、「プラスチックは本当に悪なのか?」を議論した。
プラスチックNOの流れについて、磯田氏は「プラスチック自体が悪いとは思っていない。プラスチックは非常に安全な物質で、それを捨ててゴミにするのがダメ、NOと言われていると思っている」と話す。
一方、吉田氏は「年間800万トンのプラスチックゴミが海に流れ込んでいる。プラスチックが100%プラスチックに再生する世の中だったら問題にならないと思うが、現状はプラスチックへの再生率も低い。焼却も石油が原料なので、気候変動の原因になってしまう」との見方を示す。
日本のプラスチックゴミのリサイクルにおける割合は、「マテリアルリサイクル(プラ製品などに再利用)」が23%、「ケミカルリサイクル(燃料などに再利用)」が4%、「サーマルリサイクル(発電などに再利用)」が58%、「単純焼却」が8%、「埋め立て」が6%(出展:一般社団法人プラスチック循環利用協会、2017年)。吉田氏によると「サーマルリサイクルという言葉が日本では使われているが、国際的にはリサイクルとして認められていない」という。
そもそも、なぜ海にプラスチックが流れてしまうのか。吉田氏は「日本の場合は割と分別もできている。しかし、日本でも荒川に行くとペットボトルが散乱していたり、大阪湾の海の中でもプラスチック、レジ袋が大量に見つかったりする。我々は分別をしてゴミ箱に捨てていると思っているが、雨が降ったら流れるかもしれないし、ポイ捨てする人がいるかもしれない」と説明。
では、プラスチックゴミの問題は、プラスチック自体ではなくごみ処理の問題なのか。海にはプラスチック以外のゴミも流れており、議論がすり替わっていないだろうか。
これに磯田氏は「プラスチックが有害なのではなく、分解しないから残ってしまうというだけ。分解しないというプラスチックの性質があるから便利なこともある。それを海に出さなければいい。日本では回収のインフラがあるが、世界には焼却場がほとんどない。ゴミ箱もない所でどうやってゴミを処分しようかということになる」と問題点を指摘した。
プラスチックゴミを出さないためのリサイクルはどのようにあるべきなのか。吉田氏は「プラスチックを燃やすのは理想的ではない」、磯田氏は「燃やすのは理想的だ」とそれぞれ主張する。
「プラスチックゴミはこれだけ海の中で氾濫していて、まずは源から減らそうというのが理想的な考え。そもそも使い捨て文化が蔓延していて、お年寄りやお子さん、医療用ではストローは必須かもしれないが、我々はストローがなくても飲み物を楽しく飲める。プラスチックの廃棄システム、ゴミ処理システムは完全ではないし、リサイクルにも限界がある。また日本国内で完結していなく、今までは年間150万トンを中国などに輸出していた。中国でどう処理されたかはきちんと把握しきれていなく、おそらく多くは不適切に廃棄され、環境汚染になっているだろう」(吉田氏)
「プラスチックは元々石油からできている。石油のうちプラスチックになる量はほんの数%で、あとは灯油やガソリンなど燃やすとすべてCO2が出るもの。プラスチックという形になった以上、それを処分するには燃やして灰にして体積を小さくしないといけない。プラスチックについている食べ物などを洗浄すると、水と洗剤を使うので環境を汚染する。むしろ汚れたものについては、燃やして発電するなり石炭の代わりに燃料にするといったことがリサイクルだと思う。今はなんとなく格好つけて、溶かしてまたプラスチックにしないといけない、リサイクルとはそういうものだという人が多いが、燃料として使うことも立派なリサイクルだし一番現実的だと思う」(磯田氏)
吉田氏は「“プラスチック=悪”だとは思っていない。プラスチックなしでは我々の生活は成り立たない」と磯田氏の主張に賛同しつつ、「不必要な使い捨てのプラスチックは減らしていこうということ。G7やG20でも海洋ゴミは最重要課題になっている。2015年に国連が合意した『持続可能な開発目標』というものもあるが、その中のターゲットにも入っている。ストローだけをなくしたところで確かに効果は小さいと思うが、紙やステンレスでできた代替のストローはすぐに見つかる。そういう意味で、最初の一歩として世界が取り組み始めた」と説明。
磯田氏は「感情論だけになっているので、一時的なもので終わると思っている。ストローは今後もプラスチックのままでいくのではないか。紙になるのは一時的なことであって、一部の企業は変わるかもしれないが数年後には元に戻るのではと。その方が環境にやさしい」と改めて主張した。
(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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