「日本はまだまだ“怖がらせ教育”が多い」性教育YouTuber・シオリーヌさんと考える“オープンな性”
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 いまネットで話題となっている“性教育YouTuber”のシオリーヌさん。“性の話を気軽に、オープンに”をモットーに、膣の入り口にカップを置いて子宮から流れてくる生理の血を受け止めてくれる「月経カップ」や、「正しいコンドームの付け方」などを動画で紹介。それぞれ動画の再生回数は100万回を超えるなど反響を呼んでいる。

 「正しい知識を知ってもらいたい」と性教育の動画を配信し続けているシオリーヌさん。しかし6月、「性的満足を目的とした性的なコンテンツの発信」が原因で、アカウントの収益化が一時停止に。停止に疑問の声が相次ぎ、翌日には解除されたものの、正しい知識を教えることがなぜ咎められるのだろうか。その背景にあるのが、“タブー視された性教育”だ。

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 実際にシオリーヌさんの動画を渋谷の若者に見てもらうと、「安全日と危険日ないんだ~って」(19歳・女性)、「(コンドームの付け方について)学校教育って僕たちの代とかはだいたい筆記で終わってしまう。『Q.避妊するために大事な道具はなんですか?』『A.コンドーム』だけで成績がもらえたり」(21歳・男性)、「(生理の仕組みについて)ただこういうことがあるよというだけで、詳しいメカニズムを説明されていなかった」(18歳・男性)との声があがる。

 このような人たちに向け、いわば“先生”の代わりとなって日々動画を配信しているシオリーヌさん。12日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、シオリーヌさんとともに「日本の性教育」を考えた。

■「十分な知識を持たないまま妊娠する女性に伝えたい」

 シオリーヌさんが性教育に興味を持ったきっかけは、助産師として産婦人科に勤務していた経験から。望まない妊娠や十分な知識を持たないまま行為を行い、妊娠する女性たちとの出会いがあったそうで、「若年で予期せぬ妊娠をした方や、いざ妊娠・出産をする時に初めて自分の身体に興味を持ったり、今まで知らなかったことに驚いたりする人たちに、妊娠する前に伝えてあげたかったことがたくさんあるなと何度も感じた」という。

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 シオリーヌさんは若者から「とにかく妊娠しない日を教えてほしい」と聞かれることが多いといい、「絶対に排卵をしないと約束できる日なんてない。動画の中でも危険日とか安全日という概念はそもそもないということを話していて、妊娠を望んでいない時にはなるべく確実な避妊を意識してほしいということをお願いしている」と答える。

 産婦人科医で日本家族計画協会理事長の北村邦夫氏は「妊娠は女性の体にしか起こらないので、日本のように男性に避妊を依存するという考えを変えたいと思っている」と説明。日本家族計画協会の調査(2016年)によると、避妊方法としてコンドームが82.0%、次が膣外射精の19.5%で、ピルが4.2%。この「ピル」について北村氏は「女性の人生を大きく変えると考えている」という。

 しかし、検索サイトで「ピル」のあとにスペースを入力すると「副作用」などのワードが出てくる。シオリーヌさんは「副作用が怖いというイメージがみなさんすごくある」とした上で、「今はホルモン量も調整されたピルができていたり、超低用量ピルもあったりする。最初に吐き気や頭痛があったとしても、2、3カ月続けて内服していくことで体が適応していって、副作用が少なくなっていくことも多々ある。すべての女性にピルを飲んでほしいとは思っていないが、副作用が怖いというイメージだけで自分の選択肢から外してしまうのはもったいない。まず、よく知った上で使うか使わないかを考えたらいいと思う」との見方を示す。

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 北村氏は「避妊法開発の歴史は、女性解放の歴史に繋がる。ピルというものが世界で初めて承認されたのが1960年。日本は1999年と最近で恥ずかしい話だ。避妊ということを考えると、女性たちは男支配をずっと許してきてしまったという現実がある。妊娠は男の体に絶対起こらないこと。だから、避妊については女性が主導権を握ろうという考え方が、結果的にはピルの開発に繋がる」とした。

 一方で、「日本だと手に入りづらくはないか」「そもそも婦人科へ行くことにハードルの高さを感じる」との疑問にシオリーヌさんは、「何を聞かれるか分からないという声が若い女性からある。何を開示しなきゃいけないのかとか、行ったらパンツを脱がされるんじゃないかというような怖さもあったりする。私の動画に婦人科に行ってみるというものがあって、そういうところから婦人科へのハードルも下げていきたいと思っている」と訴えた。

■性教育には親も悩む

 性教育が必要なのは子どもだけではない。親向けの性教育セミナーに参加した人たちからは、「(性について)話しづらい。きっかけがなくて、特に男の子なので分からない部分も多い」(7歳・11歳の子を持つ母親)、「3人息子の1人がLGBTで、性同一性障害。これからどうやって性を伝えていけばいいのか正直悩んでいる」(14歳・17歳・20歳の子を持つ母親)といった悩みが聞かれる。

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 そうした声にシオリーヌさんは「ネガティブな声がけを最初にしないというのはすごく大事だと思う。小さいお子さんでも“性器いじり”があったりするが、そういう時に親が『そんな汚いことしないの』『恥ずかしいことやめなさい』とつっぱねてしまうと、性の話はタブーだと植えつけられてしまう。していること自体は否定せず、マナーを伝えてあげるのが大事」と話す。

 また、解答に悩む「子どもはどうやって生まれるの?」という質問には、「コウノトリは登場させない方がいいと思う。1回はぐらかしてしまったり嘘をついたりすると、その後の修正が大変。無理にオブラートに包む必要はなくて、幼稚園生ぐらいの子で『赤ちゃんってどこからくるの?』ということが知りたいだけだったら、膣の産道があってという話だけでいいのかもしれない」との見解を示した。

 一方、北村氏は“ピンポンゲーム”と呼んでいるというやり取りを推奨し、「どうして興味を持ったのかを一旦返すべき。その時に子どもの関心のレベルが分かる。『友達はお母さんのお腹を切って生まれてきたと言うけど、僕はどこから?』という話なら、それに対する説明があるだろうし、『どうやって生まれてきたの?』という質問があった時には、子どもの関心のレベルを把握しつつ、逃げる必要はない。30年くらい年齢差があるのだから」と述べた。

■「日本は“怖がらせ教育”が多い」

 文部科学省の学習指導要領では、中学生の性教育について「生殖器の発育について」「異性の尊重・性情報への適切な対処などについて」「受精、妊娠までを取り扱い、妊娠の経過は取り扱わない」「エイズ及び性感染症の予防は、コンドームを使うこと。性的接触をしないこと」と定められている。

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 シオリーヌさんによると学校によってバラつきがあるといい、「先生方も頑張ろうとしている学校だと『具体的にやってください』と言ってくれるところがある。一方で、『コンドームを使うことまでは伝えていいけど、具体的な販売場所や付け方は話さないでください』と言われることも多い。一番大事なところが言えないという感覚になることは多々ある。(性教育には)すごくセンシティブな内容もあるので、信頼できる大人でないと相談できない部分もあると思う。子どもとの関係性は大事に育んでいかないといけない」とコミュニケーションの重要性を語る。

 北村氏は「性教育の最終目標が何かという判断は非常に難しいが、きちんと教えた方が行動は慎重になる。コンドームでは確実な避妊はできず、破けたら、外れたらどうするのか。妊娠は女性の体にしか起こらないんだから、女性が主導権を握れる避妊法を最優先しようと。そうなったら彼らもきっと悩むだろうし、結果として行動が慎重になると思う」との考えを示した。

 日本の刑法では、性行為がどのようなものかを理解して、自分が性行為をしたいかしたくないかを判断できる「性的同意年齢」を13歳と定めている。一方、性教育先進国のオランダでは、10歳から安全な性行為や性的虐待の正しい知識を得て、11歳から男性器のモデルでコンドームの装着練習をする。デンマークでは、10歳から性の専門家による指導(思春期・性別・妊娠・避妊など)を男女一緒に学ぶ。スウェーデンでは、13歳から性感染症や望まない妊娠の防ぎ方を学び、彼氏・彼女の家に宿泊する際は親からコンドームを渡すなど、様々な取り組みがある。

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 これに対しシオリーヌさんは「日本の性教育はまだまだ『しないでね』『怖いものだから』という“怖がらせ教育”がすごく多いと思う。私がYouTubeでお話しする時は『することもある』という前提で話すようにしている。そうでないと、子どもが自分がするとなった時に『この人に相談できないな』と感じると思う。することもあると思うからその時にちゃんと話そう、というスタンスで大人が伝えていくのが大事」と指摘。

 北村氏は「性教育というと、とかく性器の話に集中するようなイメージがある。しかし、ユニセフやWHOが出しているいわゆる国際性教育のガイダンスには、人権の問題やジェンダー、平等、多様性、LGBTなどがテーマになっている。決して性器の話だけではない」と述べた。

 シオリーヌさんは「人間関係とコミュニケーションと社会の文化と価値観、色んなことを包括して性教育なので、それがもっと広まってほしい」と訴えた。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

【映像】シオリーヌさんの活動風景&議論の模様

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