日本政府が韓国を輸出優遇対象国から正式に除外した28日、「日本が不当な措置を続けることを非常に遺憾に思う。日本が事態をさらに悪化させずに、韓日関係の復元のための対話に誠意をもって臨むことを重ねて求める」とコメントした李洛淵首相。
さらに李首相は「私たちは日本の不当な経済報復措置を正すため、WTOへの提訴を予定通り進めるつもりだ」とも延べているが、実際に提訴された場合、判断が示されるまでに最長で1年4か月もの期間がかかる可能性があるという。また、世耕弘成経済産業大臣は「世界全てのホワイト国的制度を導入している国から、ホワイト国としての優遇扱い受けている日本を韓国だけが外すということを韓国自身がやっておられるので、そういう中でどういう形で提訴されるのかっていうことについてはちょっと考え方を伺ってみたいなという気はする」とコメントした。
これらの発言について、28日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した同志社大学の浅羽祐樹教授は「"不当な措置だ"と言っているが、日本の輸出管理の運用見直しは、国際安全保障上の観点から不適切な事案があったので、貿易管理体制を整えてくれという、あくまでも制度上の問題提起だ。構えとしてはテクニカルな問題なので、指摘されたところを整えれば"グループA"に戻る余地はあるだろうし、そのための手順を取ってほしいということであって、いわゆる歴史問題に対する報復ではない」と説明。
その上で、「しかし韓国側は歴史問題に対する報復だと捉え、国家のプライドの問題だ、全面経済戦争だ、というところに位相が変わってしまっている。現実がどうであれ、韓国側の主観的な認識はそうなっているので、同じレベルの問題として捉え、粛々と取り組むということにならなければ、折り合いをつけられない。一方、日本側も当初からテクニカルな問題だという言い方に徹していればよかったが、残念ながらぶれてしまった部分があり、それが韓国の認識に大きな影響を及ぼした。もうちょっと整えてからやればよかったと思う。また、WTOへの提訴については、相当な準備が必要だし、テクニカルなロジックが必要。また、WTOは上級委員会のメンバーがきっちり構成されておらず、機能しない可能性が極めて高い。したがって、ある種のブラフ、脅しであって、本当は違うところでの決着を望んでいるということなんだろうと思う」と見方を示した。
朝鮮半島とその周辺の安全保障に関して懸念の声が上がる中、韓国は22日には北朝鮮の核・ミサイルなど防衛情報を共有する日韓協定「GSOMIA」の破棄を発表。その翌日、北朝鮮がミサイルを発射した。一方、韓国は25日から島根県・竹島で軍事訓練を強行。李首相は「日本政府が韓国に対して取った不当な措置を原状回復させ、韓国はGSOMIAの終了を再検討できると考える」と発言している。これに対し、菅官房長官は、「両者はまったく次元の異なる問題であると考えている」と反論している。
浅羽氏はGSOMIA破棄の問題について、「政権与党を支持している"進歩層"の9割近くが破棄に賛成している一方、保守である野党の支持層は賛成していない。つまり、文大統領を支持するかどうかという党派的な分断線がそのまま反映されている。それ以前に、日本人もそうだったと思うが、韓国人の多くはGSOMIAを知らなかったと思う。韓国検索大手『NAVER』の検索ワード1位に急浮上するくらい、"なんだそれ?"という感じだった。"ホワイト国"についても同様で、知らないけれども、やられたので同等の仕返しをするというような感覚だ」と話す。
「実は私も日韓GSOMIAまでは破棄しないだろうと読み誤ってしまった。なぜかといえば、合理的に考えて韓国の国益にとって欠かせないものは当然のように更新するだろうと考えたからだ。そもそも米韓同盟だけでは韓国防衛はできず、在韓米軍と在日米軍が一体で行動することを前提にした部隊運営だ。しかも後方基地としての在日米軍への基地提供は日本が行っているので、日本との連携も不可欠だ。ところが今回、別のロジックが働いた。それは文大統領や彼を取り巻く政権中枢のごく少数の人間が、日米韓の、もっというと米日韓の枠組みの中の日韓GSOMIAなんだという側面を見落とし、国内のロジックだけで動いてしまったということだ。今回アメリカが"強い憂慮と不満"という、外交上の用語としてはものすごく厳しい言葉を使い、しかも"韓国政府"ではなく、"文政権"と名指しして批判したのは、そのような客観的な現実を見てないのではないかという不満を表したということだ」。
しかし、韓国大統領府の金鉉宗国家安保室第2次長は「安保問題と輸出規制措置を連携させた張本人はまさに日本であることを再度指摘したい」と話し、GSOMIA終了にアメリカが懸念を示していることに対しては、「むしろ政府は韓日GSOMIAの終了を機に、安保における韓国の主導的力量の強化を通じ、韓米同盟を一段階グレードアップして行く」とも主張している。
浅羽氏は「この7月25日からの1か月の間に、北朝鮮は短距離弾道ミサイルを7回も発射している。中には韓国全土が射程圏内に入り、かつ今のミサイル防衛体制では撃ち落せない新型も含まれていたということなので、韓国にとっての脅威のレベルは明確に上がっている。にもかかわらず、"北朝鮮は平和体制を構築するパートナーである"ということで、微温的態度に徹している。互いに得意とする分野が違うので、日韓GSOMIAによってどちらの国がより得しているか、という言い方をするのはふさわしくない。しかし韓国軍は当初発表した短距離弾道ミサイルの飛距離を修正していたりもする。それがどこからの情報をもとに修正したのかと言えば、より日本海での情報がキャッチしやすいのはどこかと考えればほぼ自明だ。互いにwin-winの部分を一方の判断によって破棄されてしまったことは日本にとってもショックだが、もともと在韓米軍と在日米軍を共同でオペレーションを行っているアメリカ軍のインド太平洋軍からしてもこれは大変なことだ」と指摘した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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