授乳は1日最低24回 三つ子虐待死で母親に2審も実刑判決 「多胎児増加はもはや社会問題」
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 生まれたばかりの三つ子に、1日最低24回の授乳。寝る時間はほとんどなく外出も困難な状況で、産後うつ病になった母親は泣き止まない乳児を床にたたきつけた。

 愛知県豊田市の松下園理被告は去年1月、生後11カ月の三つ子の次男を床にたたきつけて死亡させた罪に問われている。今年3月、一審・名古屋地裁岡崎支部は松下被告に懲役3年6カ月の実刑判決を言い渡した。

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 この判決に対し、「実刑は重すぎる」として三つ子の親が署名活動を開始した。各地の多胎児の会なども「三つ子育児の大変さが理解されていない」「残された2人の子の養育も考えるべき」として減刑への賛同を求め、1万以上の署名を集めた団体もあった。

 一方で、一審の判決は裁判員裁判を経て言い渡されたもの。虐待を受けて育ったという人は「実刑判決は妥当」と減刑に反対する署名活動を開始し、「一人っ子だったら虐待死は重く裁くべきなのか」と三つ子育児の大変さを理由に減刑すべきでないと主張し、賛同する署名も集まっていた。

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 この事件は24日、名古屋高裁で控訴審判決の日を迎えた。名古屋高裁は「産後うつの症状が動機の形成に一定の影響を及ぼした」と多胎育児で母親が疲弊していた状況に理解を示した一方、「重大かつ悪質な犯行という評価は免れない」「刑が不当に重いとはいえない」として一審の実刑判決を支持した。

 この判決について、同じ三つ子を育てる母親はどのように考えているのか。AbemaTV『けやきヒルズ』の取材に答えてくれた女性は次のように話す。

 「社会から離れたところで、(三つ子を連れて)家からも出ることができない。ただただオムツとミルクの日々なので、あの事件を見てうっぷんがたまってしまうのもすごくわかった」

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 三つ子育児の大変さは、妊娠中からすでに始まっていたという。女性は医師に動かないよう指示され、点滴に繋がれたまま半年ほど入院。寝たきりの状態が続いた。

 「生む前はただただ不安で、それがうつだったのかもしれない。すごく不安な気持ちがいっぱいで出産する」

 三つ子は31週で生まれ、一番大きな子でも1700グラム程度。新生児の集中治療室「NICU」に入り、退院した後はさらに追い詰められていく。

 「(三つ子が)寝る時間もまちまちなので、母親が寝る時間も2時間くらいまとまった睡眠が2回。それが半年くらいずっと続くと、体も心もつらくなってくる。(事件があった生後11カ月のころは)育児に少しずつ慣れてきたとはいえ、心のゆとりはない。私自身も発散する方法がなくて、帯状疱疹になってしまった」

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 また、抱っこひもで前後に2人を背負い、バウンサーに1人を寝かせて足であやしたこともあるという。

 「1人が病気になると、時間差でもう1人もう1人とずれて風邪やウイルスにかかっていく。私自身も疲れきってしまった記憶がある。(松下被告と)自分が同じ立場を経験して、やってしまったのはいけないことでそこは肯定すべきところではないけれど、そうなってしまった気持ちというのは本当によく分かる。大変な部分をみんなで共有できていたらこういう結果にはなっていなかったのかな」

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 朝日新聞によると、今回の事件の三つ子は不妊治療によって授かったという。また、体外受精や胚移植などの不妊治療が本格化して以降、双胎や3胎以上の多胎児は30年間で約1.5倍と増加しているということだ(「吉村やすのり 生命の環境研究所」資料より)。なお、2008年の日本産婦人科学会の発表では、生殖補助医療における多胎妊娠防止の見解として、2胚以上の移植ができるのは「35歳以上の女性もしくは2回続けて妊娠不成立だった女性」と規定している。

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 多胎児が増えているという現状に、『ニューズウィーク日本版』の長岡義博編集長は「多胎児の増加と高齢出産の増加は明らかに因果関係があるので、社会や行政が対応すべきひとつの社会現象。行政がサポートする体制を作るというのが第一だが、それを取り巻く社会側も双子・三つ子を『かわいい』で済ませるのでなく、『親は大変なんだ』と理解してサポートする、コンセンサスを広げていく必要があると思う」と話す。

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 また、2児の母であるテレビ朝日大木優紀アナウンサーは、自身の育児経験から「何よりも睡眠不足というのが、精神的にすごくダメージになってくる。正常な判断もできないし、うつ病というところまではいかなくても追い込まれる母親は多いと思う。双子・三つ子となった時に、家の中まで踏み込んだもっと手厚いサポートが必要だと感じた」と意見を述べた。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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