「経団連は日本を良くしてきたのか」西田亮介氏の提言から考える、この30年と経済界のあり方
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 企業社会を牽引する経団連など、経済界の提言がはたして日本を良くしてきたのか――。あるシンポジウムで東京工業大学准教授の西田亮介氏がした指摘が注目を集めている。

 11月12日、労働組合の中央組織「連合」の結成30周年シンポジウムが開催され、“企業と労働者”などをテーマに議論が白熱した。会場で取材した「弁護士ドットコム」の園田昌也記者は、当日の雰囲気を次のように話す。

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 「シンポジウムのテーマが“未来を変えるための労働組合の役割”。会場の方にとってイレギュラーというか、鋭い意見が思いかけず出て緊張感があった。やはり西田先生のコメントというのは鋭い。まさか連合がゲストとして呼んだ経団連の方がある意味つるし上げになるような形は、なかなか想定されていなかったのでは」

 西田氏が問いかけたのは、「この30年で、消費税率の引き上げなどで生活者の負担は増えてきた。企業社会はどうなのか」という点。消費税が1989年に「3%」で導入され、段階的に上がってきた一方で、企業の負担となる法人税率はこの30年で段階的に下げられてきた。

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 西田氏の「法人税率、補助金、控除等総合的に見直すべきではないか」という問いに答えたのが、経団連の吉村隆産業技術本部長。「法人税率については、グローバル競争の中でどうするかという視点は持ってもらわないと困る。そこで足を引っ張られると結局、雇用を維持できないということにつながりかねない。総合的に見ていただいて、適正な水準を模索していくべきではないか」。企業の力が弱まる法人税率の上昇は世界と戦う際の足かせになるため、冷静に考えなければいけないと吉村氏は答えた。

 その後も、日本社会全体に影響力のある経団連をはじめとする、経済界への苦言を呈した西田氏。この「経団連は日本を良くしてきたのか」という指摘について、西田氏がAbemaTV『けやきヒルズ』に出演しさらに詳しく見解を述べた。

 吉村氏が唱えるグローバル競争の観点について、西田氏は「企業社会自身は持論の自己責任を負わないのだろうか。それから日本社会の抱える負担や責任を共有しないのか。働き方改革や労働時間短縮への積極性は感じられない。旧態依然とした企業は市場から撤退して、新規の企業が出てくる方が健全ではないかと思うが、民泊を規定する住宅宿泊事業法の営業日数の上限規制のようにスタートアップなどには厳しい」と反論する。

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 日本の税収の三本柱とされているのが、「所得税」「消費税」「法人税」。このうち消費税について経団連は「世代間負担の公平性などの点において他の税よりも優れる」としているが、「所得税と消費税はいま大体20兆円弱、法人税は10兆円強で推移している。消費税が優れると言われるのは、景気にあまり左右されずに税収を上げられる点。一方で、所得が少ない人の負担感が上がる、逆進性の高い税でもある」と西田氏。

 政府はデフレ解消のため経団連に7年連続で賃上げを要求し、最低賃金は引き上げられてきた。この点について経団連の中西宏明会長は「従来型のベースアップではなく、生産性の向上に結びつく働き方の議論が大切だ。定年という概念がなくなっていく」と述べている。

 しかし、西田氏はこの説明はミスリーディングだといい、「『職場の無駄をなくして効果的に働け』と言っているように聞こえるが、この間彼らは『雇用の流動性を上げるように』、つまり景気後退期には人を解雇しやすくするようにすべきだと一貫して主張してきた。景気後退期では人件費と土地などの固定資産にかかるお金がかさむので、そこを抑えたいということ。また本来労働生産性は付加価値を労働時間で割って計算する。ちょっとした無駄取りや合理化は付加価値改善に貢献せず、むしろ分母の労働時間短縮が労働生産性向上にも直結する。またこの間、労働時間は短縮せず、平成の間、日本企業の労働分配率、付加価値率ともにほとんど改善していないことも付け加えておきたい。前者は悪化気味でさえある」と指摘する。

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 経団連は1994年、「規制緩和の経済効果に関する分析と雇用対策」の中で、解雇規制緩和によって「一時的には雇用の減少が先行することは避けられない」、21世紀初頭には「雇用のミスマッチが一段と拡大するおそれがある」と分析している。

 西田氏は「解雇規制を緩和すると、先に社会の負荷が高くなることは90年代からわかっていた」とした上で、「この30年間、高所得帯の家計は伸びているが、中位と下位は伸びていない。労働者の4割弱は非正規雇用になっている。昭和、平成を通じて、政治は経済界が旗振りする提言と資金、票をあてにしてきた。生活者よりも経済界のほうを向いてきたということだ。令和の時代にも、このまま続けていくのかということを問いたい」と訴えた。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

映像:西田亮介氏が経済界に提言

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