【元テニス誌編集長のぼやき】眉唾が一転「始まってしまえば観るしかないATPカップ」

　2020年から新しい大会として「ATPカップ」が始まる、と聞いたのはいつだったのか、はっきり覚えていないが、大会の主旨を聞いたときは、そんな大会は眉唾物だと思っていた。なぜなら、そんな時期に（年明け早々）、そんなメンバーが（ランキング上位の選手が軒並み）集まるわけがないと思っていたからだ。

　ところがどっこい。2019年の9月にシドニーで行われた第一次組み合わせ抽選会の様子を見て驚いた。グループ分けの抽選に登場したのは、ジョン・ニューカム、レイトン・ヒューイット、パトリック・ラフター、そして最後にケン・ローズウォール。オーストラリアが誇るレジェンドばかりじゃないか！　ATPも本気なら、テニスオーストラリアも本気ということがわかった。これは凄い大会が始まると実感した。

　組み合わせ抽選会でどよめきが起こったのは、ワイルドカードで出場することになったオーストラリアが、ドイツ（ズベレフ）、ギリシャ（チチパス）、カナダ（シャポバロフ）と同じF組を引いたとき。一番厳しい組み合わせの中にオーストラリア（デミノー）が飛び込んだことで「死のグループ」がコンプリート。その抽選を引いた僕の英雄ローズウォールも苦笑いするしかなかった。

　カッコ内のナンバー1プレイヤーは、いずれも次代のチャンピオン候補。大会のルールでは、ランキング上位者同士が対戦することになっているので、この4人の6対戦がブリスベンで実現する。選手たちにとっては死のグループかもしれないが、見ている我々にとっては愉楽のグループ。お正月の後半はこのグループ中心の観戦で十分に楽しめることだろう。

　抽選でB組となった日本は、スペイン、ジョージア、ウルグアイとパースで戦うこととなった。パースと言えば、毎年年明け早々に、「ホップマンカップ」という男女混合のエキジビションマッチが行われていた都市。過去には日本も出場していて、最初に出場したのは、杉山愛と山本育史の2人。タイから出場していたのは、パラドン・スリチャパンとタマリネ・タナスガーン。そんな懐かしい名前が出てくる都市で、日本はラファエル・ナダルを擁するスペインと1月8日に戦うことになっている。

　9月の第一次抽選会ではC組の第1シードだったスイスが、フェデラーの欠場で11月のセカンドエントリーでは不出場になっていたり、デビスカップとの棲み分けはどうなるといった話題や、誰が出て、誰が出ないと言った噂が飛び交っている今日この頃の「ATPカップ」だが、始まってしまえば観るしかない。それがテニスファンというものだ。

文／井山夏生（元テニスジャーナル編集長）