1月3日に開幕した『ATPカップ』はATP(男子プロテニス協会)が主催する国別対抗戦。出場24カ国のトッププレイヤーが真夏のオーストラリアに集結し、シドニー、ブリスベン、パースの3カ所を舞台に10日間に渡る熱戦を繰り広げる。まずは6グループに分かれてのラウンドロビン。パースで行なわれるグループDのロシア対イタリアの見どころを紹介しよう。
第4シードのロシアは、世界ランク5位のダニール・メドベージェフと同17位のカレン・ハチャノフの若手コンビが引っ張る。ともに1996年生まれの23歳だが、既婚者だ。ハチャノフはまだ20歳だった2016年に、メドベージェフは2年遅れて22歳で身を固めた。結婚した年に楽天オープンで優勝したメドベージェフは、ロシア選手の早い結婚と活躍は関係があるかと聞かれ、「プロポーズしたときが56位で今32位だから、少なくとも僕の場合はそうかもね」とはにかんだ。それから1年と待たずに4位まで上昇し、昨年全米オープンで準優勝したことは記憶に新しい。
対するイタリアは、ロシアと対照的に30代のベテランが主力のチーム。世界ランク8位の23歳マテオ・ベレッティーニが腹筋のケガで大会を欠場したため、世界ランク12位の32歳ファビオ・フォニーニが単複でチームを引っ張る。パートナーは34歳のシモーネ・ボレッリで、このペアで2015年の全豪オープンを制した。今はダブルスに専念しているボレッリだが、シングルスでも最高で36位だった実績がある。
フォニーニといえば対戦相手や観客に対する悪態が昔から有名で、数々の侮辱行為や差別発言などで罰金処分も食らっている。そんなフォニーニが、2015年の全米オープン優勝のフラビア・ペンネッタと結婚したのは2016年6月のこと。イタリア・テニス界のスター同士、美男美女カップルで注目を集め、その後の愛妻家ぶり、子煩悩ぶりは多少イメージアップになったが、それでもなお“生涯チョイ悪”が似合いそうなキャラクターは変わらない。そして、どこか憎めない。「才能を無駄にしている選手」のようなランキングではいつも上位に名が挙がるが、昨年はトップ10の壁を初めて突破。4月にはモンテカルロで初のマスターズ優勝も果たした。
少し似た香りの漂うメドベージェフとの対戦成績は1勝2敗。直近となる昨年の上海マスターズではメドベージェフがストレートで勝利している。記者会見などで話すときはナイスガイのメドベーフェフだが、試合中は感情的で暴力的な曲者に豹変。「試合中はどうしても熱くなってしまう」という言い訳はふたり揃って同じだ。
そういえばメドベージェフは以前こんなことを言っていた。「僕たちの憧れはマラト・サフィンだった。彼のプレーを見て子供たちはみんな試合中にラケットを投げるようになったんだ(笑)」。2000年の全米オープンを20歳で制し、2005年の全豪オープンではフェデラーにも勝って2度目のグランドスラム制覇を果たした元王者サフィンは、その端正な顔立ちで女性ファンをときめかせたが、ルックスを裏切る癇癪持ちでも知られていた。そのサフィンがロシアのキャプテンを務める。まだ39歳。現役時代にフォニーニと3度対戦している(サフィンの2勝1敗)。時代を超えたチョイ悪たちの絡みが大いに楽しみなカードだ。
文/山口奈緒美