ATP(男子プロテニス協会)が主催するテニスの国別対抗戦『ATPカップ』は大会4日目を終え、グループラウンドの2戦目が全て終了。パース会場が舞台のグループBに属する日本はジョージアと対戦し、2-1で勝利をおさめたが、日本チームを応援する全ての人々をヒヤヒヤさせたのは添田豪だ。
添田にとってはプレッシャーでしかない戦いが続いている。ウルグアイとの初戦で戦ったのは世界ランク522位のマルティン・クエバスだったが、今回はそれよりもさらに下の679位のアレクサンドル・メトレヴェリ。クエバスにはランキング差を見せつけてストレート勝ちしたものの、この試合では重圧を乗り越えるまでに長く緊迫した時間を要した。
メトレヴェリはスペインとの初戦で世界ランク9位のロベルト・バウティスタ アグートに0-6 0-6で敗れている。失うものは何もないのと同時に、大舞台で世界9位と戦った経験がそうさせたのか、強気の態度と攻めの姿勢を前面に押し出してきた。第1セット3-0とリードを広げた添田だが、第5ゲームでブレークバックを許す。さらに第9ゲームをブレークされてついにリードを奪われると、そのまま簡単にキープを許してセットを奪われた。
「勝ちたいという気持ちが強すぎて、固くなった」と添田。安全なショットしか打てず、ときに仕掛ければミスになった。第2セットは第2ゲームでブレークしてようやく流れを変えるかと思ったのも束の間、すぐにまたブレークバックを許し、第4ゲームはブレークポイントを生かせない。このあたりがもっとも苦しい時間帯だった。しかし、第6ゲームでもらった2連続ダブルフォルトを生かしてブレーク。これでようやく「ラリーの組み立て方がわかってきて、落ち着いてやれば大丈夫だと思えるようになった」と添田らしい速い展開でラリーの主導権を握り始め、セットをタイに戻すと、最終セットは 6-2と力の差を見せた。
苦境を乗り越えた添田から、目には見えないバトンを受けた西岡は世界ランク26位のニコロズ・バシラシビリを破り、日本は2連勝でグループステージ最終戦を迎えることとなった。相手は今大会最強と目されるスペインで、添田が挑むのは世界ランク9位のロベルト・バウティスタ アグート。ここまでの2戦で感じた類いのプレッシャーからはやっと解放される。元世界47位の35歳はどんなプレーを見せてくれるだろうか。
文/山口奈緒美