オーストラリアで開催中のATPツアー世界国別対抗戦『ATPカップ』で、ロシアのダニール・メドベージェフがまたキレた。
ロシア対アルゼンチンの準々決勝で、カレン・ハチャノフで先勝したロシアは、続いて世界ランク5位のメドベージェフが14位のディエゴ・シュワルツマンからセットを先取。しかし、第2セットは第7ゲームで先にブレークを許す。西岡良仁と同じツアーでもっとも低身長のシュワルツマンはやはり足が武器で、しぶとくガッツあふれるプレーヤーだ。メドベージェフの苛立ちも募っていたのだろう。そして事件は起こった。
チェンジエンドで両者がそれぞれのチームのベンチに戻るためにすれ違った際に口論が勃発。あとでわかったことは、シュワルツマンが自身のネットインに対して詫びのジェスチャーをしなかったことがメドベージェフは気に入らなかったらしい。ネットに当たったボールが相手側に入った場合は、手を上げて詫びるのが一応マナーとされている。
二人のやり取りがもとで主審のモハメド・ライヤニさんから「コード・バイオレーション(違反行為)」を警告されたメドベージェフは、審判台に詰め寄って理由を確認。「スポーツマンらしくない行為による警告ですよ。やめるようにとずっと注意していたでしょう?」と言われると、「なぜだ?」と不満を露わにしながらラケットで審判台の側面を叩いた。観客がどよめく。「向こう(シュワルツマン)にも警告したのか」と聞き、「してない」と答えられるとまたもバシッ! 当然ながらポイント・ペナルティ(次のゲームでの最初のポイントが相手に与えられる)を宣告されたが、ここでかろうじて踏みとどまり、このセットを奪われたものの最終セットで勝利した。
最後はシュワルツマンに近寄り、仲直りの言葉を交わして表面上は一件落着。「終わった出来事。椅子も壊れなかったし、誰も傷つけていない。ラケットも壊れなかった。でも罰金だろうね。まあしょうがない」と開き直った。準優勝した昨年の全米オープンでは、「僕も人間だし、未熟者なので間違いもおかす。もう少し成長するのを待ってほしい」とスタンドに語りかけ、ファンにも見守る気持ちが芽生えたのだが、道のりは長そうだ。
文/山口奈緒美