拡大する新型肺炎、中国人訪日客は当時の20倍以上に SARSの教訓は生かせるか?
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 中国で感染が拡大している「新型コロナウイルス」による肺炎で、感染者は580人、死亡者は17人となった。

 中国の国家衛生健康委員会は22日、初めて会見を行い、「すでにヒトからヒトへの感染が出ている」「生活エリアで感染する可能性もある」と説明。また、「ウイルスは変異する可能性がある」とした上で、「さらに拡大する恐れがある」と述べた。

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 新型肺炎の感染者は、中国本土以外にも台湾、日本、韓国、タイで確認され、アメリカでも初めて報告された。アメリカでは、ニューヨークなど3カ所の国際空港で武漢からの渡航者を対象に検疫体制を強化しているが、新たにアトランタとシカゴでも検疫対策を始める。また、武漢からの渡航者の入国はこの5つの空港に制限する。

 感染経路について中国の専門家チームの医師は、武漢市にある「華南海鮮市場」で食用として売られていた野生のタケネズミやアナグマなどからヒトに感染した可能性が高いとする見方を示した。この市場はすでに閉鎖されていて、当局は感染拡大を防ぐために野生動物の取引の管理を強化している。

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中国では2002年から2003年にかけて、『SARS(重症急性呼吸器症候群)』が流行した。2002年11月に中国南部の広東省仏山市で最初の患者が確認されると、水面下で患者が増加。そのまま2003年2月1日の春節を迎え、4月初旬に北京の医師が症例の過小報告をメディアに告発した。その後、中国政府は政策を転換し情報を公開。7月にWHOが終息宣言を出したが、合計患者数は8439人、死者は812人に及んだ。

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 今年の春節は1月25日からで、日本へも多くの旅行者が訪れることが予想される。中国人訪日客数はここ数年で急増しており、SARSが流行した2003年は44万8782人だったが、2019年は959万4300人と約21倍にも増えている。2003年当時、北京に住んでいたという『ニューズウィーク日本版』編集長の長岡義博氏は「当時、感染者が日本に来るリスクは日本企業の駐在員か日本人留学生が帰ってくるぐらいだった。それが、中国人観光客が1000万人来るようになっている。ということは、リスクも20倍になっている」と警鐘を鳴らす。

 一方、感染拡大の懸念点として、中国の消極的なメディア報道があげられるという。「(新型肺炎について)中国メディアは3週間だんまりを決め込んでいた。当局の『報道するな』という指示で、彼らとしてはしょうがない部分もあるが、感染していない人が感染者と知らずに接触し、結果として感染が広がっていった。情報をもっと早く的確に公表していれば、これほど感染者は広がらなかったと思う」。

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 また、習近平政権のメディア統制によって、SARS流行時に活躍した調査報道記者が姿を消してしまったといい、「メディアから調査報道が消え、できないならいてもしょうがないということで、私の知り合いも何人も廃業している。今回の対応はSARS流行時より早いかもしれないが、報道の力が弱まっているのは確実にマイナスポイントだと思う」と指摘した。

 長岡氏が初めて会った中国人に2003年に北京にいたことを伝えると、必ず『SARSで大変だったね』と言われるという。それを踏まえ、「なぜかというと、彼らの間に本当の危機だったという体験が今も共有されているから。今回、初動は残念な対応だったが、その危機的な状況が彼らの記憶に残っていれば、今後は当時よりはまともな対応ができるのではないか」とした。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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