止まることのないコロナウイルスの猛威。感染とともに増えているのが、不確かな情報、フェイク情報だ。現状について、WHOも「パンデミック」ならぬ「インフォデミック」、つまり根拠なき情報に人々が振り回されているとして注意喚起。サイトを立ち上げ、1問1答を掲載。うがい薬やごま油などが予防に有効との説を否定するなど、正しい情報の発信に努めている。
日本では4日、徳島市の医師がFacebookに「徳島コロナ上陸しました」「犯人は中国人夫婦だそうで」「ばらまかれてます」などと投稿。これに対し、徳島県の担当者が「罹患者はいない、誤情報は拡散しないで欲しい」と注意喚起するという問題も起きている。また、加藤勝信厚生労働大臣は、今後の状況を見極めた上で、エボラ出血熱、ペスト、クリミア・コンゴ出血熱などが含まれる「一類感染症」相当への指定も視野に検討を進める考えを示している。
上海東和クリニックの藤田康介医師は「中国では“乙”、日本でいう二類のグループに入れていて、私もそれで良いのではないかと思っている」と話す。
「実際のところ、そこまで重篤になるというケースは実はあまり多くないし、地域差をみて、そこから冷静に判断しなければいけない。死者の9割以上は湖北省、武漢あたりの死者。上海では6日夜現在、累計で254人の感染者が発表されているが、その中で重症は16人。死者は1人のみ。日本人や韓国、ドイツ、シンガポールがそれぞれ国民を戻したが、感染率は大体1.5%くらいだ。エボラ出血熱であれば致死率は10%程になるが、今回の場合、湖北省で3%、全体でも2%くらい。大部分の人は症状が軽いので、症状が出ない人もいるが、そういう人は基本的に経過も良好なので、そこまで恐れる必要はないということだ。中国政府も正しい知識で予防するということについて一生懸命ケアしている」。
他方、日本政府の対応について藤田医師は「噂などを明確に否定するような機関がないということが心配。中国では感染症を扱う専門機関があり、そこが見張っている。情報をチェックできるサイトもあるし、フェイク情報を流した人は見つかれば処罰という形になった。さらに言えば、疾患を防ぐことために一番いい方法は人に会わないことなので、中国政府ではリモートワークをするようにということで進めている」と話した。
ふかわりょうは「テレビのキー局でさえ騙される可能性がある」、慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「ニュース番組は周辺の情報を含め、扱いすぎだと思う。クルーズ船が港に着く瞬間とか、船内の映像を繰り返し流す必要は本当にあるのだろうか。そういう中でデマの拡散が加速していくのだと思う。死亡率も地域によって違うわけだし、どういう症状が出るのか、あるいはどういう治療をするのかなど、治った人の情報が入ってこない気がする」と苦言を呈した。
ファクトチェックの普及活動を行うNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」の楊井人文氏は「沖縄でも感染者が出たなど、あちこちでデマが出ていて、恐怖に踊らされている感じがするし、過剰に報道しすぎだ。熊本地震でライオンが逃げたというデマを流した人は、偽計業務妨害で逮捕された。最終的に不起訴にはなったが、全く処罰されないというわけでは必ずしもない。ただ、徳島のケースが意図的な捏造で無かったとすれば、情報を流した医師が何かの理由で信じ込んでしまったのだと思う」と話す。
「私たちFIJも特設サイトを作り、メディアが検証したものやファクトチェック団体が検証したものを掲載している。ただ、重要なのは、どんな情報も根拠がきちんと示されていれば、ある程度は信頼できると思う。逆に言えば、根拠のない情報は基本的に信じないというくらい心構えを持っていた方がいい」。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「SARSが流行した2003年時点ではまだSNSが普及してなかったが、今やこういう事態は絶対に避けられない。また、福島第一原発の事故のときにも多くのデマが流れたが、面白半分なものばかりではなく、善意のつもりで皆が拡散しているものもあった。実はそういう“正義の暴走“が一番怖い。まともな医師や研究者ほど、確定的なことは言わない。それなのに、“絶対安全なのか?”と問い、“100%安全ではない”と答えた瞬間、騒ぐ。“直ちに影響はない”という言葉も、それしか正しい言い方がなかったのに。まさに“ゼロリスク症候群”だ。仮に厚生労働省が根拠を提示したあとしても、“国は嘘をついている”とか、“情報を隠している”と言い出す人もいて、永遠に終わらない。中国のように一党独裁支配だからこそ厳しい対応ができるわけで、それができない日本ではこういうジレンマがるという点が重要だ」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶映像:
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側