無神論者の多い現代日本 Twitter上で新たに生まれる“宗教”とその存在理由とは
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 感染拡大の一途をたどる新型コロナウイルス。感染者数が5000人を突破した韓国で、拡散の要因の一つとみられているのが新興宗教「新天地イエス教会」の信者の間での集団感染だ。事態が明らかになった後も、団体が信者の名前を公表しなかったため感染拡大に拍車をかけたと非難殺到し、教祖のイ・マンヒ氏がメディアの前での土下座謝罪に追い込まれた。

 無宗教者も多い現代。「葬式などを除き、日常から信仰している宗教は?」というアンケートでは、「ない」と答えた人が62%、「仏教」31%、「神道」3%、「キリスト教」1%、「無回答」2%、「その他」1%となっている(出典:国際比較調査グループ)となっているとおり、新興宗教の信者数も年々減少しているという。

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 番組がやってきたのは、島根県の山里に拠点を構えるある宗教法人「宇宙神道惟神道産土会」。1948年、宇宙を創造する神様が地球を救うために天から下りてきたことをきっかけに設立された。大地震などの予言が下り、それらの困難を少しでも取り除くために祈りを捧げているのだという。 その名の通り、境内には銀河系をイメージした構造物が数多く点在する。州濱武彦会長は「宇宙神道惟神道産土会(うちゅうしんとうかんながらのみちうぶすなかい)作られた神が付けた名前。長いでしょ?書くのも大変なんですよね」と話す。

 ところが近年は高齢化の影響もあり、会員は減少傾向。一口100円からの寄付で運営しているが存続については一抹の不安を抱えているようだ。州濱氏は「発信しないといけないとは思うが、発信は難しい。資金もないし発信の仕方も大変」と話した。

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 そもそも新興宗教とは、近代以降に成立した宗教のことを指す。國學院大學の井上順孝名誉教授は「マスコミでは新興宗教と呼ぶが、我々は“新宗教”と呼んでいる。世界的にも19世紀から20世紀にかけてたくさんの宗教ができていて、ヨーロッパやアメリカでは“New religious movement(NRM)”と呼んでいる」と話す。

■「アンチテーゼを唱えることが教義」

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 そんな中、ネットを使って新たな団体を立ち上げ、人を集めている団体も現れている。中でもユニークなものとして世界的に知られるのが、SNSで勢力を拡大する「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教」(日本では宗教法人として未認可)だ。2005年、アメリカで「生物や宇宙は神が創造した」という思想にアンチテーゼを唱えるため、ボビー・ヘンダーソン氏が「この世を創造したのは空飛ぶスパゲッティ・モンスターだ」として新たな“神”を作り出したところ、各国のネット民の間で話題となり、オランダでは正式な宗教団体として認可。本気で信じる人もいるのだという。

 ニュージーランドでは信者同士の“パスタ婚”を開催、発祥の地・アメリカではパスタの湯切りざるを被った姿が正装だと主張、その姿での写真が“宗教上の理由”として免許証に使えるまでになっているという。

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 日本支部も存在、事務局ナポリタン神官氏は「考え方そのものが非常にユニークでジョークとパロディに満ちていて非常に魅力的なので、宗教のエントリーには非常にいい」と話し、「全国に3000人以上の信者がいて、主にフェイスブックやSNSで交流をした後に、気が合ったメンバーでミサをする。洗礼を受けるような儀式もあれば、リア充感たっぷりの単なるパーティー的なものもある」と説明した。

 同じく日本支部の小神官、ゲタ パンク ハナオ氏は「大きな特徴は、ドグマを拒絶すること。これはこうだ、あれはああだといったあらゆるものを拒絶する。世界最薄最軽量の宗教だということを謳っている。だから入るのもフェイスブックにいいね!を押せばOK。日本支部を立ち上げるにあたって、米国のヘンダーソンさんに“日本支部を作りたい”とメールで聞いたところ、“OK”と2文字で返ってきた。僕はそのあたりにぐっと惹かれた」と話した。

■「“宗教上の理由”というための宗教」

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 また、こちらも宗教法人としては未認可だが、SNSを用いて急成長を遂げているのが「MtoP教団」だ。入信はTwitterアカウントをフォローするだけでよく、お布施もないという。創設者の「現人神」ことヒサノモトヒロ氏(23)は、普段は写真家を生業にしており、2018念11月、「神様になってみたかった。深夜のテンションで、ベッドの中で作った」と団体を立ち上げた。

 「海外では信じる宗教があるのが普通なので、世界一周に行ったとき、ホテルのレセプションでも宗教を何と書いたらいいのか分からず、無宗教というのは不便だと思った。そして日本には宗教的な組織が大量にあるが、宗教的な組織と宗教と名乗っている組織の違いは何なのだろうと疑問に思った。ただ、日本においては宗教というとあまりいいイメージがなく、お金を稼ごうとか思想を広めようとしたときに、わざわざ宗教と名乗るのは不利だ。それでも僕は宗教と名乗ったほうが興味を持ってもらえるし面白がってもらえると思った」。

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 その後、Twitterで協力者を募集したところ、約110人が参加。宗教名や経典、教義を作成した。現在、信者数は723人に上る。人気の理由は「宗教上の理由を使うための宗教」だという。「教えの中に、時間外労働を断ること、育休・産休を最大限使うことなどがある。これによって会社に対して“宗教上の理由”という言い訳が使えるようになる。むしろ、他の新興宗教からの誘いを“宗教上の理由”として断ることもできる」。さらに、虫を退治さられるのが嫌だという人や、一発ギャグをさせられるのが嫌だといった人の求めに応じ、教義は新しいものが次々と採用され、今も膨らんでいる。

 「神様の居心地は良い。信仰の対象は僕だが、その代わりに便利な教義を使って良いということにしている。他の宗教と兼ねても良いので、その意味では僕はナンバー2の神様で良いと思っている。脱退もTwitterのフォローを外してもらえれば良い」。

■なぜ新しい宗教は生まれる?

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 日本人の宗教観について、前出の井上氏は「教団に属しているということと、宗教的なことに親和性があるというのは分けて考えないといけない。初詣は7割の人が行くし、学生でも前年にお墓参りに行ったかと尋ねると5割程度になる。つまり、習俗的なところでは宗教に馴染んでいる。どこかに所属していないから日本人は無宗教だというのは間違いだ。これはアメリカでも同様で、“所属していないけれども宗教的”という言葉がある。これは世界的な傾向で、宗教と宗教、宗教と宗教でないもののボーダーラインが緩やかになっていて、むしろ分ける必要がないのではないかと感じる人も増えている」と話す。

 その上で、「宗教施設に行ったり礼拝をしたりする中で、“果たしてそれは本当なのだろうか”“この人たちはなぜこのようなことをしているのだろうか”といった漠然とした問いを持ったり、“アンチ”という形で出たきたものが、むしろ真剣な問いに近づく道になることもあると思う」とした。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「何かを求めることの根源には、社会状況や家庭環境、時代の流れが密接していると思う。なぜSNSや、社会的に鍵だと思われるようなもので人を惹きつけようとしているのか。また、関わりたいと思う人たちの根源的なものについて丁寧に読み解く必要があると思う」とコメント。

 また、大学で宗教学を学んだタレントのパックンは「自分の言葉で説明できないことについて“神様のせいだ”と考えるのはいいが、そうした宗教心や教義によって行動するとか、言われたとおりに動かなければいけないという義務感が生まれてしまうのは嫌だ」、同じく大学で宗教学を学んだという宮澤エマは「新興宗教の中には“カルト”と言われているものもあるが、どうして既存の新興宗教は正しいもの、信頼できるものと思われているのに、新しいものは胡散臭い、良くないもの、と思われてしまうのか。キリスト教だって始まった当初はカルトのように見られていたと言うし、若い人は既存の組織に属すのが嫌で、自分たちで新しいものを作りたいという感覚を持つもの。歴史を振り返れば、新しい宗教が生まれてくるのが当たり前なんだと教わったことを思い出した」と振り返っていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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