今年の春闘は11日、大手企業の集中回答日を迎えた。新型コロナウイルスの影響を警戒する経営側からは厳しい回答が相次いでいる。
春闘の相場をリードするトヨタは7年ぶりにベースアップゼロで、平均1万100円の賃上げ要求に対して回答は8600円にとどまった。鉄鋼業界では最大手の日本製鉄などが7年ぶりに、食品業界では明治が6年ぶりにベア見送り。電気業界では、パナソニックが賃上げと確定拠出年金の引き上げを含めて総額1000円増となった。2014年以降、6年間続いてきた賃上げの勢いに陰りが出始めている。
そもそも「春闘」について、東京工業大学准教授の西田亮介氏は「日本の経済界と労働界の慣例で、この時期に来年度の賃上げ交渉を行う。日本は昭和の後半以来、いわゆる“重厚長大産業”が有力だったので、その動向をみながらいろいろな業界の賃上げの傾向が決まっていく。労働組合側の要求としては“ベースアップ”。多くの日本型企業では年齢と職階に応じた俸給表を使っているが、その全体の引き上げを行うと多くの人も給料が上がる。それとボーナスの引き上げの両方を求めていた。その中でトヨタは日本の産業をリードする企業なので、どんな回答をするかが注目されている」と説明する。
トヨタは2019年4-9月の中間決算で、3年連続の増収増益で純利益は過去最高だと発表していた。「今後の自動車業界の競争激化、IT企業の参入や電動化などに多額の投資が必要なので、ベースアップは見送って定期昇給等含めて賃上げをすると回答した。他社も軒並みベースアップできる状況ではない。ベースアップは多くの労働者にメリットがある反面、人件費が最大の固定費となる企業の負担は大きい。また将来の労働者にとっての不利益変更、つまり条件を厳しくすることが難しいので、労使で厳しい交渉が起きる」と西田氏。
一方で、こうした企業の判断は新型コロナウイルスによる影響だけでなく、去年10月からの消費税増税(8%→10%)も影響していると指摘。「安倍政権では、“官製春闘”と言われ政府主導で産業界に要請して賃上げを行ってきたというのが売りのひとつだった。それが今回は顕著な賃上げが見込めない状況で、政治にも影響が出てきそうだ。コロナがどこで終息するか見えない中で、消費税率の引き上げの影響もより出てくると考えると、来年の景気の見通しは今よりも厳しくなるのでは」とした。
さらに、新型コロナウイルスの影響で世界的に株価が下落。経済への影響懸念から企業が一方的に内定を取り消すという自体も起きているという。西田氏は「約10年前のリーマンショックの時も内定取り消しがたくさん出て問題になった。内定は労働契約なので、企業都合では基本的に取り消せない。多くの学生が苦しむことになりかねない。同じことが繰り返されないようにみていかないといけない」と指摘した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
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