新型コロナウイルスの感染が確認され、事実上の“封鎖”が2カ月以上にわたって続いている中国・武漢。一時人が消えた街は、8日の封鎖解除を前に少しずつ賑わいを取り戻し、経済活動も徐々に再開してきている。
強硬な封じ込め対策を進めてきた習近平国家主席。3月10日には習主席が初めて武漢を訪問するなどし、中国国内での収束ムードが広がる中、中国政府は動き出す。
中国政府は感染が急拡大するイタリアに医療チームを派遣。支援が始まると、イタリアの街角で中国国歌が鳴り響く動画が、中国のSNSで拡散されたこともあった。さらに、スロバキアへ検査キットや使い捨てマスク100万枚など、医療物資を支援。セルビアでは、大統領自ら中国の医療サポートチームを出迎えた。イラクでは、中国の支援で新たなPCR研究施設もオープンした。
支援の手は日本にも。ただ一方で、こうした海外支援について世論操作に利用しているのではないかとの声もあがっている。この指摘に中国外務省の華春瑩(カ・シュンエイ)報道官は「何もせず黙って見ていてほしいのか」とコメントした。
中国の海外支援の背景には何があるのか。終息した後の“アフターコロナ”を見据えた思惑とは。『ニューズウィーク日本版』編集長の長岡義博氏は「米オバマ前大統領の首席補佐官だったラーム・エマニュエルが残した言葉で『リーダーは決して危機を無駄にしてはならない』というものがある。中国はまさにそれを実践している。ウイルスが発生した直後は不透明性や対応の遅れに対する自国民の不満が爆発して、『これで中国は変わるだろう』と国際社会も期待を抱いたが、現実は全く逆。イタリアやフランスなど個人主義が強い国で感染が広がったのを見て、『やっぱり民主主義はよくない』『自分たちの強権的な政治のほうが優れている』という価値観を今後世界に広げていくことを危惧している」との見方を示す。
新型コロナウイルスの“発祥地”をめぐっては、アメリカと中国が双方にあると応酬を繰り広げている。長岡氏は「米中貿易戦争を見ても、トランプが大統領になってからは、どちらが覇権を取るか押し合いを続けている状態。このコロナをきっかけに中国が一歩抜きん出る可能性はある」とも指摘。
一方で、両国のせめぎ合いは日本にも影響を与えかねないといい、「アメリカが自国中心主義で引きこもっていく中で、中国の力が台頭しているのが現在の国際情勢。実は今、日本はどちらにつくのかの瀬戸際にいる。日本の外交が今後どのような方向に進んでいくのか、今日本は大きな分岐点に立っている」とした。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
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