新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、娯楽という娯楽も普段通りに楽しむことがままならない中、将棋の棋士・女流棋士によるSNSでの発信が活気づき、ファンを喜ばせている。これまでSNSに縁がなかったレジェンド級の棋士も、この機会にと新たに参加したことで、早くから始めていた若手棋士や女流棋士たちも刺激を受け、対局やイベントが楽しめなくなったファンたちの心に、新たな楽しみを届けている。
▶映像:佐藤康・森内・谷川のレジェンド3人組が生まれたドラフト会議
4月11日の午後7時、突如として誕生したのが佐藤康光九段、森内俊之九段、谷川浩司九段の「チーム康光」というTwitterのアカウント。もともとは、トップ棋士による団体戦「第3回AbemaTVトーナメント」をきっかけに結成した3人組だ。全員が名人経験者、谷川九段は十七世名人、森内九段は十八世名人の有資格者。佐藤九段は永世棋聖の有資格者で日本将棋連盟会長、前会長が谷川九段、森内九段は専務理事経験者と、将棋界を各方面から盛り上げてきた“レジェンドチーム”だ。
一週間前の写真です。家族に御祝いをしてもらいました。
— ◇チーム康光◇第3回AbemaTVトーナメント (@TeamYasumitsu) April 13, 2020
この頃は、まだ気軽にケーキを買いに行けたと思うと、当たり前の日常がいかに幸福だったかと痛感します。
58歳になりましたが、私個人としての目標は今はありません。平穏な日々を願うばかりです。
谷川浩司 pic.twitter.com/x2H27BRodh
大会の告知用かと思われたアカウントだったが、このアカウントによりTwitter初体験となった谷川九段が、佐藤・森内の2人とくだけた会話をする様や、58歳の誕生日でもらったケーキ画像をアップするなど、普段は見られない様子にファンが殺到。佐藤九段、森内九段は、ネタを仕込んだり詰将棋をアップしたりと工夫を凝らし、将棋関連のTwitterアカウントとしては驚異的なスピードでフォロワー数を伸ばした。
これに追随する形でアカウントができた「チーム久保」は、久保利明九段・菅井竜也八段・今泉健司四段の3人組。こちらも団体戦を戦う仲間だが、関西の振り飛車党が集まったこともあってか「チーム康光」以上にネタ要素が満載。将棋の話ももちろん出てくるが、「捌きのアーティスト」の異名を持つ久保九段がなぜかラップ調、カラオケで歌うならこんな曲など、フリートークが日々繰り広げられている。
将棋関連のSNSといえば、これまで最も注目を集めていたのが羽生善治九段だ。Instagramのアカウントでは、ファンから100の質問を募集する企画をスタート。こちらのアカウントは将棋というより素顔を見せていく内容だったが、新たな一手を繰り出したという状況だ。また引退した棋士では、加藤一二三九段のTwitterアカウントも根強い人気を誇り、14万を超えるフォロワー数は群を抜いている。
YouTubeではチャンネル名「イトシンTV」が人気の伊藤真吾五段、ゲーム・アニメ・麻雀などでも活躍する香川愛生女流三段や、YouTuber「アゲアゲさん」の愛称で呼ばれ、先に行われたプロ編入試験を見事にクリアし今月1日にプロになったばかりの折田翔吾四段らがいる。
これまでは各地で行われてきた将棋祭りや、タイトル戦などで行われる大盤解説会など、リアルイベントが棋士とファンとをつなぐ主な場所だったが、今回の外出自粛をきっかけにベテラン、若手、男女を問わず、SNSを使っての交流の場が、さらに拡大していきそうだ。