新型コロナウイルスの感染拡大を受け、患者を受け入れる感染症指定病院からも悲鳴があがっている。
福井県立病院では、患者数92人に対して病床は100床とひっ迫。新型コロナウイルスに関する業務は大きく3つで、(1)帰国者・接触者の外来、(2)PCR検査と診断、(3)入院治療。しかし、同病院の橋爪泰夫院長は12日、「8割は軽症、2割は重症でそれほどでもないと軽くみていた。実際に患者を受け入れてみると、予想以上に入院経過で急速に重症化し、人工呼吸器や集中治療管理が必要な患者が急増した。大きな3つのパートをまかないきれない。なんでもかんでも『指定医療機関』がやるのは限界がある」と訴えた。
また、PCR検査の現場からも、検査数をすぐに増やすことはできないという声もあがっている。子どもを出産してわずか2カ月で職場に復帰せざるを得なかったという、関西の病院で働く検査技師の20代女性は「PCR検査は、検査技師全員ができるわけではない。機械を持っている病院機関も珍しく、最近できた検査なので、若い検査技師しかできないというのも検査不足につながっている」「PCR検査1検体当たり1時間かかるので、物理的に1日24検体しかできない。PCRの機械を扱うにあたっても講習を受けないといけないので、その時間を取れるのか、それだけの検査技師を集められるのか。現実的ではないかもしれないし、導入も時間がかかるのではないかと思う」と話している。
一部では医療崩壊目前とも言われる状況。『ニューズウィーク日本版』編集長の長岡義博氏は「私の知り合いにも1人、数日前から味覚がなく、高熱が続いて呼吸も苦しいという人がいる。相談センターや保健所に電話してもたらい回しにされ、PCR検査もしてもらえない。同じような人はたくさんいると思うが、検査技師が足りないというのはその通りで、全員を検査してコロナだと確定してしまうと法律上入院させないといけない。そうすると院内感染をしたり、それだけにとどまらず医療従事者も感染して医療崩壊が起きてしまう恐れがある。その意識がどこかで働いて、検査数が少ない状況になっている部分もあるのではないか」と話す。
また、こうした状況に陥っている原因については、「1月28日に新型コロナウイルス感染症を指定感染症として定めた。指定感染症になると、軽症者も含めて病院に入院しないといけなくなる。病院がコロナの患者で溢れて、結果的ににっちもさっちもいかなくなる状況が近づいている。感染防止対策は水際で止めきれず、クラスターに移行しているがそれも追いつかなくなっているのが現状だ」と指摘した。
では、今後どのような対応が考えられるのか。長岡氏は「予想を超えて広がっている状況は否定しようがない。重症者と軽症者、無症状者を線引きして、重症者は先端医療の整った病院に入ってもらい、軽症者や無症状者はすでに一部で始まっているがホテルや自宅で療養してもらう。ニューヨークや中国の武漢のように、空いている土地に仮設病院をつくるのも必要だ。ただ、それは医療従事者がいる前提なので、人手が足りなくなってしまう場合は、いまお休みしている医師や看護師の方に出てきていただくという手法も考えられるのではないか」とした。
(ABEMA/『けやきヒルズ』より)
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