「若者のニュース離れ」は本当に深刻?作る側に求められる努力と工夫
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 4月からお笑いコンビのEXITが木曜レギュラーMCを担当するようになった『ABEMA Prime』。視聴者からは、「こんな真剣に報道番組を見たのは初めて」「今まで知らなかったことを学べた」「ニュースを見るきっかけをくれてありがとう」といった声が寄せられている。

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 NHK放送文化研究所による2018年の調査では、「政治・経済・社会のニュースを意識して接しているか」という問いに対し、16~19歳は43%、20代が46%、30代が62%、40代が66%、50代が71%、60代が75%と、若い世代ほど生活の中でニュースに触れる機会が少ない実態が浮き彫りになっている。また、ニュースを見ている側の若者が最も使うニュースメディアは、テレビが35%で、SNS(LINE NEWS含む)が30%(2018年のNHK放送文化研究所のデータ)となっている。

 実際、番組が若者に話を聞いてみると、「内容が難しい」「見なきゃいけないとは思っていても、YouTubeとかLINEとかインスタとか、娯楽を優先しちゃう」といった意見が上がる。

 また、テレビのニュース番組についても「文章で終わる話を長くやっているイメージある。いらない情報が多い、本当に」「ツイッターで十分」との厳しい声が。一方、「どれを選べばいいのかもわからないって状況になると、やっぱり“人”で選ぶのかなと感じている」と、”ヒント”めいた発言も。

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 番組スタッフの一人として「どうやったら番組を見てもらえるか」を日々考えている岩崎海十ディレクター(25)も、こうした調査に答えた世代の一人。「若者からすると、単純に見るメリットが感じられないし、限られた時間の中で何を優先するかといえば、学生であれば部活やYouTubeの話など、友達との話題に上ること。僕もLINE NEWSやYahoo!ニュースをでスマホでササっとみる感じ。外出自粛要請が出された時も友人からLINEニュースの速報のスクリーンショットと一緒に“遊びいけないね”という連絡が来た。普段は仕事だから見ているだけであって、正直、何分も見てらんないなって」と話す。

 「情報を摂取する手段としては、ネット記事だから見ても、報道番組となると映像だから“かったるい”と思ってしまうので、それを取り除けるほどの面白さがないといけないと思っている。それは議論というものだと思う。事実自体に面白みはないが、“そういう視点もあったんだ”という発見、将来がどうなるのかなどの話が見られるのなら、映像でやる意味があると思っている。やっぱり“自分事化”させることが重要だと思う。年金だとか、まだ若者がピンとこないテーマを冒頭で扱ってしまうと、さすがにEXITファンでも離れていってしまうのではないかと思う」。

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 当のEXITのりんたろー。「僕も“見た方がいい”と言われると見ないが、実際に見てみると面白いと思うことがあった。そういう感覚が持てればいい」、兼近大樹は「ニュースのためにテレビが始まって、その隙間を埋める“つなぎ”としてバラエティが生まれたと聞いた。でも、今はバラエティ番組が終わってニュースが始まると、面白くないものが始まったと思って見なくなる。面白いものを提供するという意識を持つことと、若者にも喋らせないとダメだと思っている」と話す。

 フリーアナウンサーの柴田阿弥は「当事者意識を持ってもらうとか、議論に落とし込むのはいいが、被害者の家まで行って“今どんなお気持ちですか”と聞いたり、不安を煽るようなBGMを付けたりと、惹きつけるのが目的の映像を作るのは果たして良いことなのか。私は嫌だし、それで見てもらおうとするのは危険なことだと思う」とコメント。

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 一方、SNSのタイムラインはフォロワーの投稿が、Yahoo!ニュースやLINEニュースも閲覧した記事などの傾向を元にAIが提示した記事も並ぶため、ユーザー自身が興味を持つ記事ばかりを読んでしまうという問題も指摘されてきた。

 明治大学総合数理学部の五十嵐悠紀准教授は「学生に“どうやってニュースに触れている?”と聞いたら、やはりLINE NEWSで、新聞を読んでいるという人はなかなかいなかった。世の中にはコロナ以外の話題もたくさんあって、例えば平成から令和に変わってちょうど1年といった話題もあるはずなのに、どうしてもコロナの話題ばかりが出てくる。そういうリスクに気づいておく必要はあると思う。一方で、例えば私よりも子どもの方が東京の新型コロナウイルス感染者数を早く入手していることもある。やはり自分たちに身近に感じることや興味のあるニュースには触れよう、取ってこようという意思が芽生えていると思う。興味のないものをどうやって届けるかというのは難しい問題だが、“若者だから”と考えてしまうのは見方が狭くなってしまうと思う」と話す。

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 こうした状況に、司会進行を務めるテレビ朝日平石直之アナウンサーは、『報道ステーション』やニューヨーク支局など、20年以上にわたり報道の最前線にいる。「私にとってみれば、ニュースは毎日の食事と同じで、生きていくために必要。自分が好きなものじゃないものについても、どうやって入ってくるようにしておくか、ということは知っておいたほうがいい。10分でもいいから、ストレートニュースを頭から見るだけでも違うかなと思うが…説教臭いですかね」。さらに「ただ、テレビ局員だから“見るべきだ”“見て欲しい”となるが、そもそも見る必要があるのか考えないといけない。肩書を外せば、“見たほうがいいよ”くらいかもしれない(笑)」と本音も。

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 月に約1000本もの記事を編集しているというネットニュース編集者の中川淳一郎氏は「私の去年最大のヒット記事は『ヤクザとタピオカ』という記事だった。その後も『ヤクザとマスク』『ヤクザと10万円給付』と、ひたすらヤクザと絡めれば食いつくと。作り手の側が、金脈見つけて、どんどん出せば若者も見てくれると思う」とした上で、次のような独自の見方を示した。

 「若い人がニュースを見ないのはしょうがないし、社会人になってから見まくればいい。年をとれば見るようになる。そもそも、メディアが取り上げる“若者のなんとか離れ”は嘘くさい。わさび離れとか、おでんのからし離れとか、交通事故離れとか、意味が分からない。でも、ニュースを見れば儲かるし、バカがいっぱい登場するから面白い。そして、ニュースを見ないと人生が終わる。例えば、“バカッター騒動”は4年周期で起きていて、2013年にはじめて発生、2017年にも起きたので、また来年起きる。なぜかと言えば、“これはまずい。俺の学校に電話がきて、退学になってしまう”と危機感を持った世代が卒業して、次の世代がバカッターをやる年になってしまうからだ。ニュースを見続けていれば分かるし、人生も終わらないということを啓蒙すべきだ」。

 “若者のニュース離れ”は作り手のイメージに過ぎず、工夫次第で変えられるのかもしれない。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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