EXIT「ウソが拡散しているが、諦めるしかない」…著名人や事件・事故の関係者を苦しめ続ける「トレンドブログ」の実態
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 新型コロナウイルスへの人々の不安に乗じて、実在する個人の情報や企業名を含む、様々な誤情報がネット上に氾濫している。そうした“ネットデマ”の発信源の一つになっているのが、いわゆる“トレンドブログ”だ。

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 検索エンジンからユーザーを引き込んで閲覧数を伸ばし、ページに掲載した広告からの収益を上げることを目的に、話題になった芸能人や事件、事故の当事者などについて、ネット上の情報を総合して記事を作成したサイトだ。

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 例えば『ABEMA Prime』レギュラーのお笑いコンビ・EXITについて検索してみると、『りんたろー。(EXIT芸人)結婚してる嫁や彼女や娘?元相方不詳』『りんたろー。【EXIT】は顔でかい?遠近法とマスクでごまかし』といったトレンドブログが検索結果の上位に表示される。相方の兼近大樹は「僕の場合、やっぱり過去に問題を抱えているので、そういう事実に基づいて、さらに嘘を載せていると思う。中には9割くらいがウソだというものもあるが、読んだ人たちは信じて拡散してしまう。芸能界に入った以上、ムチャクチャなことを言われるというのは覚悟しているので、正直諦めているというか、“こんなこと書いてるよ”みたいに笑うしかない」と困惑した表情を浮かべる。

■「“トレンドブログ”などと呼ぶこと自体が間違っている。“クソパクリサイト”でいい」

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 こうしたトレンドブログについて警鐘を鳴らしてきたのが、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏だ。「ネット上の情報をコピペしてまとめたものばかりで、作成者の取材力はゼロだ。写真もネット上に転がっているものを許可も取らずに使っているだけ。そして『学歴は?カップ数は?年収は?』など、人々が気になって食いつくような見出しにする。しかし大抵は最後まで読んでも答えは分からない。“トレンドブログ”などと呼ぶこと自体が間違っている。こんなのは“クソパクリサイト”でいい。喝だ」と憤る。

 「例えば平石(直之アナウンサー)さんのトレンドブログも存在している。読み上げると、タイトルは『平石直之アナ、テレビ朝日での結婚(妻)、結婚、年収、学歴、評判は?』。“身長は173cm。すらっとしてカッコいいですね。だいたい60kgというところでしょうか。平均年収はテレビ朝日では1350万円とされていますが、平石さんほどの売れっ子だったら1500~2000万円は確実なのではないか”と書かれている。今も番組内容を見てパクろうとしているバカがいるかもしれない。平石さんの反応を見て、“平石アナ、年収2000万円を否定”みたいな記事を書いているかもしれない」。

■「全ての人が書かれる可能性があると考えて欲しい」…被害者は泣き寝入りも

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 ネット関連のトラブルを手掛ける深澤諭史弁護士は「こうしたトレンドブログにまつわる相談件数が増えている。デマかどうかに関係なく、第三者が見ることによって書かれた人の社会的評価が下がる記事であれば名誉棄損が成立する可能性があるし、著作権侵害やプライバシー権侵害に問われる可能性もある」と話す。

 「俺がトレンドブログに対して怒りを覚えたのは、3年ほど前、ある女性が八ヶ岳で滑落して亡くなる事故があった。そのことが東京新聞のウェブ版と産経新聞系のiza(イザ!)というニュースサイトに出ると、数時間後には『八ヶ岳で滑落死したYさんの顔写真は?』『祖母が号泣』といったトレンドブログが登場したことだ。このように、全ての人が被害者になる可能性があると考えて欲しい。特に女性の場合、事件や事故の被害者だったとしてもすぐに対象になってしまう。なぜかといえば、顔、カップ数、年収、彼氏の有無などへの人々の興味・欲望があり、それを満たすために記事を編集しているからだ。“読者はこういうものが好きだろう”と考えること自体は良くても、人の死を利用していいのだろうか。企業や、俺のように名前を出して仕事をしていれば訴えられる可能性があるので、慎重に報道するだろう。しかし匿名の個人なら、内容証明を送りつけられたりしても、逃げてしまえばいい」(中川氏)。

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 さらに中川氏は「2015年にDeNAが運営する『WELQ』の問題が起きて以降、ネットの情報を選別・編集しただけのキュレーションサイトが潰れていった。しかし、潰れたのは大手企業がやっていたものばかりで、今も個人のキュレーションサイトはたくさん残っている。トレンドブログも含め、これらは全てが“クソパクリサイト”だ。私はネットは自由であるべきだと思っているし、匿名にも大賛成だ。実名じゃなきゃダメだという人に対しては“お前はネットをつまらなくするのか”と言いたいくらいだ。しかしこうしたサイトには、いわゆる“文責“がない。EXITのお二人も柴田さんも、問題発言をしたら干されるかもしれない、という恐怖感を味わいながら仕事をしているはずだ。しかし誰がやっているのかも分からないので、著作権・肖像権侵害をされても基本的には泣き寝入りするしかない。そして、ABEMAはこうしてEXITのお二人や柴田阿弥さんに喋ってもらうために事前にブッキングをし、きちんとギャラも払っている。そして連携している『ABEMA TIMES』がこの番組内容を元に記事を書くのもいい。しかし、同じことを他の人がタダでやるのはどうだろうか。その意味では、スポーツ新聞のネット版も同じだと思う」と、ネットニュースの孕む問題点も指摘した。

■「知りたい・見たいという人たちがいなければ記事は生まれない」

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 そんなモラルを無視したトレンドブログを通して1日に30万円を稼ぐ運営者もいるという。

 かつてトレンドブログを運営をしていた倉谷ユウ氏は「“これをやったら収入が増える”ということが分かってしまうと、やらないという選択をするのは難しい。しかも検索に強いサイトが上位を席巻しているので、もっと捻ったキーワードを、ということで、“感染女性の本名を特定”のように、えげつない内容で上位を取ろうとする。例えば被害者が親子のような事件の犯人が公務員だったりすると、人は特定し、ぶっ叩きたくなる。私の立場からは言いにくいことだが、そういう、知りたい・見たいという人たちがいなければ記事は生まれないので、見る側にも多少の責任はあると思う」と吐露。

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 運営をやめた理由については「毎日2~4時間くらい書いていても、収入が100円を切っていたときもある。一番稼げた時で日に1万円くらいだった。中川さんが“クソパクリ”と言っていたが、ゴミを作っているという自覚はあった。楽しくは無かったし、罪悪感もあった。だから特定するとか、確証が持てないような内容は書かなかった。運営をやめたのは、全てが“アクセス数が取れるかどうか”でしか見えなくなってきてしまったからだ。ニュースと見聞きして、“なんてひどいことなんだろう”“遺族はすごく悲しかっただろうな”という気持ちよりも先に“被害を受けた車両が軽だったなら、現場はすごく派手だっただろうな。アクセスが来るだろうな”と瞬間的に思うようになってしまった。自分を客観視して、“こんなのはダメだろう。1週間後、1年後に思い返した時に、自分が許せなくなるだろう”と感じたのでやめた」と明かした。

 そんな倉谷氏を、中川氏は「倉谷さんはnoteですごく真っ当な文章を書いていて、トレンドブログをやってたことに対して“自分は何やってんだ”って思ったとか、“今日は怒られる”として番組に出ることも告知してくださっていた。良心がある方だ」と評価した。

■YouTubeにも進出、ノウハウの情報商材化も

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 しかし最近ではニュースサイトの記事などから引用したものを動画化した“文字動画”などをYouTubeに投稿するパターンも増えており、新型コロナウイルスの感染で亡くなった岡江久美子さんの“息子”を自称する動画が複数アップされ、非難を浴びたことも記憶に新しい。しかし、動画を作成した男性は取材に対し「再生回数・名前・チャンネルを知ってもらうためだった。迷いやためらいは特になかった。今後も再生回数のためなら手段を選ばないという考えだ」と悪びれる様子もない。

 それだけではない。ネット上には「ユーザーが欲する情報を届けることは悪いことではない。食べたい人に商品を提供する飲食店と同じ」「トレンド要素を活用するのは立派な戦略」「そもそも世の中はデマだらけ。結局は読む人次第」といった“トレンドブログ肯定派”も少なくないのが現状で、その運営方法やテクニックを情報商材として売る人たちも存在するのが現状だ。

 EXITのりんたろー。は「今は誹謗中傷に方にアクセスが集中するが、良い文章の方が評価されるという時代が来てもいいと思う」、柴田は「私はこういう仕事だし、女性なので、家とか特定されたらたまったものじゃない。最近はディープフェイクもあるし、家族が誹謗中傷されたら許せない。情報開示請求をしまくって番組で特集してもらってもいいかもしれないし、ガンガン訴えていくという有名人がいてもいいと思う」と話していた。

■「人の大事なものを踏みにじる自由はネット上にもない」

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 対策について中川氏は「誰でも公の場所に文章を出せるネットの自由は素晴らしい。その境遇が与えられたのだから、とにかく誹謗中傷はせず、責任を持てということだと思う。分かっている人なら、“カップ数は?”とか、“学歴は?”といったタイトルを見た瞬間、これはクソブログだと分かるので見ない。それでも検索結果の上位に出てしまうので、Googleなどには何とか対策をして欲しいところだ。まずは1ページ目に来ないようにする。広告に関しても、基本的に広告主は広告代理店に任せているので、どこに表示されているのかを把握していない可能性が高い。しかし差別的な内容を掲載していた『保守速報』が訴えられた際には、支援者たちが広告を出している企業に対して意見したことで、いわば“兵糧攻め“にされた。今はそういうやり方しかない」と説明、「例えばスマイリーキクチさんは10年にわたってネット上で誹謗中傷を受け続けたが、戦った結果、相手が書類送検された。その経験を元に講演をしたり、オピニオンを出されたりしているので、EXITのお二人も柴田さんも泣き寝入りする必要はないと思う」とアドバイスした。

 倉谷氏は「Googleの場合、検索のアルゴリズムで3カ月ごとにアップデートしているので、以前よりもトレンドブログが上位に来る確率は減っていると思う。昨年9月、今月にも大きな変更があった。それでもニッチなところを狙ってくるので、表示がゼロにはなることはないと思う。それでも、少しずついい方向には向かっていると思う。やはりインターネットの自由は現実世界の自由と変わりがないと思う。逆に言えば、人権を侵害したり、人の大事なものを踏みにじる自由はネット上にもない。現実世界と同じくらい、相手のことを人だと思うことが大事だ」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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